27.罪と罰(山田三郎) ページ27
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教室に入ると朝だというのにもう賑やかで、クラスメイトたちは口々にぼくに声をかけてくる。ぼくはそれに応対しながらも、その馬鹿げたようすをどこからか俯瞰する自分にも気がついている。
Aは今日も教室の端で、ノートに痩せた猫の絵を描いていた。まわりの人とはちがって、貝のように只管に黙って、睫毛を伏せている。ぼくはじっと見ているわけにもいかないので席について、文庫本を机から出した。冬の温度はすっかりブックカバーを侵して、ぼくの冷えた手はさらに悴んだ。
文字を追うふりをして眼球を動かす。Aの席には、彼女の友達がそばにいて、何か話して笑いあっている。文字を追うふりをして頁を捲る。さっきまでぼくにくだらない話をしていたあいつは、違う人に同じ話を聞かせている。つまらない。(どうしてこんなにつまらない世界でAは笑っていられるんだよ？)蜘蛛の糸はまだ降りてはこない。歪んだチャイムが鳴る。今日がはじまる。
頭のおかしな人は多いけれど、きっとその人たちにはぼくの方がおかしく見えている。狂人に埋め尽くされた世界で、ぼくだけが狂わなかったのなら、それはぼくが既に狂っているからなのだ。(さようなら！さようなら人類。)…ぼくはそう思いながら昨日午前2時に目を瞑ったけれど、その別れはとうとうやってこなかった。
A。A。A。あなたはぼくと結ばれるべきなんだ。
まだ話したこともないあなた。見つめあったこともないあなた。あなたが好きです。何うしようもなく。
あなたが下らない世界で笑う所為でぼくはここに留められるのだ。
だから蜘蛛の糸が降りてきたなら、ぼくはだれよりも早くのぼって、あなたを消してしまうのだ。
そうしたらようやく教室に火をつけて、世界を壊してしまおう。
ぼくは咽喉から溢れそうな笑いを押し殺して、斜め前の席を見た。最高の気分だ。Aはぼくの視線に気づかずにまたかわいらしく笑った。その笑顔を壊すのはぼくだけ。そうでしょう？
本に栞を挟んで机の中に仕舞った。顔を伏せる。今日がはじまるのは憂鬱なことだけど、今日を過ごすことでまた世界が終わりに近づくのだとぼくは思う。それはとてもすばらしいことなので、ぼくは笑った。だれにも見られないまま。
Aの総てをなくしてしまって、そう、ああ、まるで宇宙がはじまったように、必然性をもって、ぼくはきみを愛しています。
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タメィゴゥ - めちゃ面白かったです！ド好みです！ありがとうございました！ (2019年12月23日 18時) (
レス) id: 98d1675711 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - タメィゴゥさん» リクエストありがとうございます！そういうのめちゃ好きです！遅くなるかもしれませんがサマトキ了解しました！ (2019年12月4日 1時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
タメィゴゥ - すみませんリクエスト良いでしょうか？ もしよろしければ左馬刻様が夢主にでろでろに依存してしまい離れられないお話を書いていただけませんでしょうか？ リクエストがもはやキャラ崩壊ですがよろしければお願いします。<(_ _)> (2019年12月2日 19時) (レス) id: 78b2b55a96 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - 林檎麻さん» こちらこそありがとうございます！！！はらいくうこうくん、了解しました！ちょいムズですね…がんばります (2019年11月6日 21時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - いつも素晴らしいお話をありがとうございます…とっても好きです…愛してます…。リクエストでよかったら波羅夷空却くんをお願いしてもいいですかね…??応援してます…!! (2019年11月3日 2時) (レス) id: 5fe5e3438d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：43沿い | 作成日時：2018年8月31日 0時
