11.菊(入間銃兎) ページ11
菊
リセット。
結局引き金を引いて終わるんなら、それなら神さまなんていらない。ヒトなんて生きていなくていい。
天井からぶら下がる紐が、なによりも神聖である。俺は無神論者だからそう思った。
Aは愛を信じつづけてる。愛なんて嘘だ。この世でもっとも最低の行為は、ヒト同士の愛ごっこだ、俺はいつかそう言ったことがあるが、Aは諦めたように、そう、と、一言言って微笑んだだけだった。つまらねえ女。俺は中学の頃から女の趣味が悪いのだから、しょうがない人生だ。
明日も出勤してくると思ってるグズの同僚どもの、度肝を抜かれた馬鹿ヅラを思い浮かべて吐き気がする。気持ちの悪い同情をしておべっか並べて、葬式で笑うんだろう。Aには仲間も敵もいないから、その点楽だろう。未練がないかどうかは知らない。あってもなくても、きっとどうでもいいことなのだろうな。
「銃兎さん。どうでしたか。人生」
「ああ。思ってたよりつまらなかったな。Aは？」
「おもしろかったよ。ただ、次の方がもっと面白くなりそうだなって思うくらい」
なあんだ、俺たちは似た者同士だ。
とうとう5時45分になった。Aはこの時刻が一等好きらしい。
車のボンネットに映った夕陽が丸く揺れた。俺とAの影がただ伸びる部屋。俺たちは心中をする。モノクロームの東京の真ん中、シュプレヒコール。「公務員はストライキしちゃ、いけないんだよ。」「うるさいですよ。」
俺は朝出勤したそのままの格好に着替えた。Aは白いワンピースだ。ああ、俺はふと、菊を買い忘れたことを思い出した。「いいよ、そんなのは。どうせ警察が踏み荒らしてしまうから」そうかもな、と思った。
二人で仲良く、並んで紐に首をかける。「おまえ、土壇場でやっぱやめる、は無しだからな」「わかってるよ。ちゃんと死のう。」いっしょに。付け加えて言ってしまった、俺はやっぱりAのことが好きだったんだなと実感した。Aはおかしそうに笑って、台を蹴った。
愛はさいごまで信じられなかった。Aは俺に与えていたらしいが、全く覚えはない。
夕焼けにパンザマストがぼんやりと浮かんだ。窓から差し込む陽は、世界で一番綺麗に見えた。「なあ、A。」隣のAはきっと泣いてただろうが、心配するのはあとからでいい。Aの言うもっと面白い次の人生にも俺がいたなら、それは愛よりも最低なことだな。
台を蹴る。
ー
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タメィゴゥ - めちゃ面白かったです！ド好みです！ありがとうございました！ (2019年12月23日 18時) (
レス) id: 98d1675711 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - タメィゴゥさん» リクエストありがとうございます！そういうのめちゃ好きです！遅くなるかもしれませんがサマトキ了解しました！ (2019年12月4日 1時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
タメィゴゥ - すみませんリクエスト良いでしょうか？ もしよろしければ左馬刻様が夢主にでろでろに依存してしまい離れられないお話を書いていただけませんでしょうか？ リクエストがもはやキャラ崩壊ですがよろしければお願いします。<(_ _)> (2019年12月2日 19時) (レス) id: 78b2b55a96 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - 林檎麻さん» こちらこそありがとうございます！！！はらいくうこうくん、了解しました！ちょいムズですね…がんばります (2019年11月6日 21時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - いつも素晴らしいお話をありがとうございます…とっても好きです…愛してます…。リクエストでよかったら波羅夷空却くんをお願いしてもいいですかね…??応援してます…!! (2019年11月3日 2時) (レス) id: 5fe5e3438d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：43沿い | 作成日時：2018年8月31日 0時
