#003 part>7 ページ19
ホテルの近くには、うっそうとした森が広がっていた。
雨風は徐々に強まり、森の木々をざわざわと大きく波立たせている。
『天月くーーん!!』
大声を張り上げても、そのざわめきが私の声をかき消す。
『どこに行っちゃったの・・・』
わたしは途方に暮れ、額から滴る雨粒をぬぐい、溜息を漏らした。
そ「大丈夫?」
『はい・・・』
そらる君は心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
『もうちょっと奥の方に・・・くしゅん!』
奥の方まで探しに行きましょう。
そう言おうとした途端、くしゃみが邪魔をした。
そ「Aちゃん、寒いんでしょ?」
『へ、平気ですよ・・・くしゅん!』
そ「ったく、Aちゃん、意外に強情だね。ほら・・・」
『え!?』
苦笑したそらる君は、おもむろにわたしの肩を引き寄せた。
そらる君の腕に、身体が包み込まれる。
『っ・・・!?そ、そらるく・・・!?』
(な、なに・・・?これは・・・なに?)
そ「からだ、冷えきっちゃってる」
そう言いながら、そらる君はそっと腕に力を込める。
ぎゅっと抱きしめられて、思わず心臓が大きく飛び跳ねた。
(っ・・・!!)
そらる君の胸や腕の温もりが、じんわりと身体にしみこんでくる。
(心臓がドキドキいってる・・・
そらる君にドキドキって・・・)
どうしたらいいかわからず、そらる君の腕に身を任せたままでいると、耳元で「ありがとう」とそらる君が囁いた。
どぎまぎしながらそらる君の顔を見上げると、
そ「こんな雨の中、天月君を捜してくれて」
と、そらる君が付け加える。
『だ、だって天月君は大事な家族みたいな人だし・・・っ』
そ「うん、そうだね。
でも俺にとってはAちゃんも大事だから、これ以上、無理させたくないんだ。」
最後に、耳の中に吹き込むように、
わかって?
とそらる君が優しく言った。
冷たくなってしまった私の耳には、そらる君の吐息が異様に熱く感じられた。
そんなこと・・・と、私が言いかけたその時ーー。
ま「そらる君!!」
まふ君の声が聞こえたので、私は慌てて、そらる君の腕をふりほどいた。
ま「天月君、見つかったよ!」
息を切らしながらまふ君がいう。
良かった!
天月君、無事だったんだ。
わたしとそらる君は同時にホッと胸をなでおろした。
そ「とにかく戻ろう」
『は、はい!』
そらる君の言葉に私は頷いて歩き始めた。
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作者名:ぱんだ | 作成日時:2013年12月25日 13時