じゅーいち。【トイレの花子さん】 ページ13
懇願、恋慕、欲求、執着、愛玩、親愛―――どれだけ意味のある場所にキスを落としてくれても唇にだけは一切触れてくれない。その事がやけに寂しくて、空虚に感じて、体温の感じれないそのカラダにキュッと抱きつけば、花子くんは「甘えんぼさんだなぁ」と優しく微笑み、言葉を紡ぐ。
「ミツリ、痛い?」
「ううん、大丈夫だよ普くん
受けるはずだった呪いを、赤の他人に移すものだもん、どうしても代償は大きくなる
もう慣れちゃったよ」
「……そっか
それにしても、ミツリがそっちで呼ぶの珍しいね」
たぶん、それを許してくれる花子くんの優しさに甘えてるのと、寧々ちゃんへの小さな嫉妬だ。 私の時はあんな態度じゃなかったのに、私を特別扱いしてくれてるのか、それとも寧々ちゃんが特別なのか。優しい花子くんだから、寧々ちゃんに対して揶揄うかのようにするのは仕方ない。そもそも、私は寧々ちゃんのことも……
どろどろとした思考回路で、自己中心的な気持ち、もう自分じゃどうしようもなくなって泣きたくなった時に、甘える為だけに名前を呼ぶ。
花子くんはそれを知ってか知らずか、ただただ私を見つめて、撫でてくれるんだ。
突然、ドアの向こうでカツン、といった足音が鳴ったと思えば花子くんはスっと消えていく。足音を鳴らして屋上に上がってきた相手は聞き飽きた声で馬鹿丁寧にも目の前に立ち、見下ろして声をかけてきた。
「やっぱりここに居たんだね、安倍さん」
「せっかくいい雰囲気だったのに。もうちょっと空気読んで欲しいんだけど?源会長……ううん、輝くん」
「君のために読む空気なんてないよ
それよりも生徒会の仕事は終わったのかい?」
「そっか〜性格悪〜い。
仕事なら終わってるよ、明日提出でも問題ないでしょ?
それよりも“安倍さん”だなんて随分と他人行儀、もっと前みたいに……」
わざわざそんな事のために私の元に来るなんて、この生徒会長は暇なのだろうか。それとも私が霊力を使ったのを気にかけて……?いや、まぁそんなハズないだろう、だって彼は私のことを心底嫌っているのだから。
「まぁいいや、それよりも今何時?」
「16時53分だけど……」
「そう、私このあと土籠先生に呼ばれてるの、もう行っていい?」
そう言うと、何も言わずに通してくれる輝くん。何とか、ありもしない約束でこの場を脱却したが、きっと輝くんにはその約束は無いものだと気づいてるんだろうなぁ、なんて思ったりもした。
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作者名:沙之揺來 | 作成日時:2020年2月21日 3時