じゅーさん。【ようせいさん】 ページ15
人魚の事件があってから1週間。寧々ちゃんは毎日毎日、放課後から下校時刻まで校内中のトイレ掃除をさせられていた。
そういえば、昔は良くトイレ掃除させられてたっけな……なんて思いつつも私はただ、しくしくと嘆きながら掃除を続けている寧々ちゃんを、トイレの窓に腰掛けながら眺めている。すると、いい加減花子くんに何を言っても無駄だと気づいたのだろう。矛先を私に変えれば、文句を言い始めた。
「それよりもなんで光璃は掃除してないのよ!!」
「花子くんに別件のお手伝い任されちゃってるの、ごめんね?寧々ちゃん」
「そーそー、ミツリは俺のためにえっちな本買ってきてくれるの☆」
「えっちいのは私のだけで満足してよ〜!
って、違う、そんな事よりなんてま寧々ちゃんはそんなにお掃除嫌なの?」
私がそう聞くと、寧々ちゃんはよくぞ聞いてくれました!と言わんばかりに満面の笑みでブイサインをして声たかだかに言う。
本当に、先程までメソメソと掃除を渋っていた子とは同一人物とは思えないほどに。
「デートのお誘い貰っちゃったの!
しかもクラスで1番かっこいい藤くんに─」
「デートッ!」
寧々ちゃんがデートという事実に随分と驚いたのだろう。でも、一体どんなことをしているのか、というと放課後の空き教室で生徒会の資料を作っているだけ。しかも寧々ちゃん1人で。
生徒会に所属してる藤くんは、書類整理を寧々ちゃんに任し、なにか別のことをしているらしい。随分とまぁ都合のいい女というか、利用されているというか。輝くんに文句言っておこうかな……なんて考えていると。花子くんは利用されている寧々ちゃんをどうにかしてでもトイレ掃除させたいらしい。
私を差し置いて、寧々ちゃんを口説く。
「ねー俺にしなよ
そんな男よりずーっとヤサシクするからさ」
後ろから、逃げ場のないように寧々ちゃんを囲えば、そのままふわりと抱きしめ、手に触れる。
その状態だけを見れば、間違えなく口説いてるかのように見えるのだが、抱きしめた時にモップを持たせている花子くん。寧々ちゃんも手に握らされたモップに気づいたのか、一度は頬を赤らめていたにも関わらずスっと後退していった。
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作者名:沙之揺來 | 作成日時:2020年2月21日 3時