59話 ページ14
驚いたクィリナスは取り繕って観客席を抜けていく。今、私も元の席に戻ろうとしても鉢合わせるかもしれないだろう。そう思った私は、数分教師用の座席に隠れある程度経ったところで戻ろうとした。
もう大丈夫だろう、そう思い観客席を囲む裏廊下に出れば人は誰一人もいない。シン、と静まり返ったそこには、私とクィリナス、ただ2人だけしか居なかった。
「こんな所でどうしたのですか、アリス」
「クィリナスこそ、こんな所でどうかしたのかしら」
一定の距離を保ったままの会話。まるで第三者から見たら旧知の友人かのように見えるそれも、実際はお互い臨戦態勢であり、下手なことをしたら殺す、と言わんばかりだった。
「随分と強気ですね
ご主人様は生かすことをお望みですが、やはりあなたは危険だ。殺しとくべきですかね」
「伝えはしない、と言ったけども邪魔をしないとは言ってないわよ」
それに……そう、私が続けようとする前にクィリナスは腕を伸ばしてきたかと思うと、首をつかみ、締め上げてきた。目には光を宿してなく、唇はにぃっと歪められている。明確の殺意を持ったそれはいとも容易く私を捉えあげ、私の意識を奪っていく。
あぁ、こんな所で死ぬのだろうか……まだ誰も救ってすらいないのに。嫌だな、レギュ助けに来てくれないかな……なんていう淡い期待を胸に、視界が暗転した。
◇◇◇
青臭い葉の香り、ツンとした刺激臭、甘くどろりとまとわりつく様な香り。様々な、でも薬学を嗜む魔法使いならば嗅ぎなれた匂いで目を覚ます。どうやら私は死ななかったらしい。それどころか内々で助けられ匿われてすらいるのだ。
後でお礼をしなくてはな、部屋が薬品で埋まっているしセブルスの部屋なのかな、なんて思っていると部屋の主が嫌そうに声をかけてきた。
「ふん、起きたのか
だからあれほどアイツに関わるな、と言ったであろう」
「ふふ、そう言いながらも助けてくれたのね、ありがとうセブルス」
「目の前で倒れてる奴を見捨てるほど人間性を捨ててはいないのでね」
皮肉交じりの言葉を交わしながらもその手は首に薬を塗り、優しく包帯を巻いていく。包帯を巻き終わったかと思えば、どこからか気分を落ち着かせるための薬草茶を出したかと思うとガチャり、と音を立てて私の目の前に差し出された。
「それを飲んだらさっさと出ていけ」
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ひな(プロフ) - 更新なされないんですか？レギュラスの話あまりなくてこの話見つけてとても楽しく読まさせていただいてたんですけど笑 (2020年5月3日 13時) (
レス) id: b1d986a2cc (このIDを非表示/違反報告)
さゆら(プロフ) - りんなさん» りんなさんコメントありがとうございます！ 更新が超不定期で申し訳ありません。一気に読んで頂けて嬉しい限りでございます！ またうちの子達を動かしていこうと思いますので、ぜひお楽しみください！ (2019年5月29日 1時) (レス) id: 7dbd51c71f (このIDを非表示/違反報告)
りんな - とても面白くて一気に読んでしまいました！更新楽しみに待ってます！頑張ってください！ (2019年1月22日 22時) (レス) id: 1df12e5f71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さゆら | 作成日時：2018年12月21日 2時
