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彼からは逃げた方が良いと本能が言っていた。
キョロキョロと落ち着きなく辺りを見渡し、それからベランダに視線を移して伏見が此方に来ていない事を確認する。
...今だ。
出来るだけ足音を立てないように_でも素早く_私は玄関へ足を進める。
はやく、はやくはやくはやく。
何度も後ろを見ながらもドアノブに手を掛け押そうとしたその時、煙草の匂いが鼻腔を支配した。
「何処に行こうとしてたんだ?」
するり、とドアノブにかけていた手を撫でられる。
煙草の匂いと彼の声の近さに本能が警報音を鳴らす。
何か言い訳しなくてはと口を只管に動かしていると、伏見は思いの外穏やかな声で言った。
「ダメだろ?まだ怪我も治ってないのに外に出ちゃあ。...あぁ、それともオレが怖かったのか?ごめんな、やっぱり刺激が強かったか」
彼はまるで自分の煙草の匂いを私に移すかのように私を抱き締める。
くるりと身体の向きを反対にさせられて、伏見の琥珀と目が合った。それを見ていると先程のことを思い出してしまい、私は直ぐに彼から目を逸らす。それがいけなかったのかもしれない。
「..こんなに傷付いて。確かにオレも少しやり過ぎたけど、他の男と話すキミが悪いんだぞ?オレが居るのに、他の奴なんかと話すから」
頬を撫でられたと思ったら、殴られた部分をぐっと押された。鈍い痛みがそこに走り、私は思わず目を瞑る。
伏見はそれに笑って、また頬を優しく撫で始めた。
「痛いよな?怖いよな?..でもA、安心して?オレが君を治してあげる。オレが君を、楽にしてあげるから」
彼の瞳が鈍く光る。
過去にもそれを見た気がするが上手く思い出せなくて、そしてそれを思い出そうと見つめている間に段々と瞼が降りてきた。
「ずっと一緒に居ような?A」
あぁ、そうだ、私は前にも、
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みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - 蒼空麗さん» お褒めの言葉ありがとうございます…!!こちらこそ読んでいただきありがとうございます!!そう思ってくださったのなら幸いです…泣 (2021年10月11日 15時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
蒼空麗(プロフ) - 愛おしさしかないですありがとうございます (2021年10月6日 16時) (レス) @page26 id: ee676be244 (このIDを非表示/違反報告)
みそ漬けキュウリで殴る(プロフ) - 狛々さん» 読んでいただきありがとうございます!!本当ですか!?めっちゃ嬉しいです…泣考察要素もありますのでぜひぜひ考察していって頂ければと思います! (2021年10月6日 7時) (レス) id: ed00509d09 (このIDを非表示/違反報告)
狛々(プロフ) - 1話読み進めるごとに一番右の星押してました。この作品を読むだけで頭がよくなった気がします!!!! (2021年10月5日 22時) (レス) id: 0c572bf162 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みそ漬けキュウリで殴る | 作成日時:2021年10月5日 19時