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『…あなたは怖くない。危険だとは思わない。』
「Aは騙されているんだ、俺の見かけに。」
「俺のこの顔も、声も、匂いだって、すべて君を惑わせるために造られているんだ。」
冷たい目で私を見ると、いきなり4ｍほどの高さにある木へと飛び乗った。
「Aは俺から逃げられないよ。」
「俺は君より遥かに速く動ける。」
そういったかと思うと一瞬で私の目の前に立ち、横にあった大木を引っこ抜く。
「…力だって君は俺に勝てない。」
その木を遠くへぶん投げたかと思うと、私の首元へと手をあてる。
「……君の首なんて一瞬でへし折れるんだ。」
『…構わない。』
まっすぐ彼を見返してそういうと、一瞬つらそうな眼を見せた。
「…実際に人を殺してる。」
『関係ない。』
テヒョンは徐々にわたしに近づく。
「君の命も奪おうかと考えた。……Aの血を求めているんだ。」
『……テヒョンを信じてるから。』
「…やめたほうがいい。」
手が頬に触れそうになった瞬間、テヒョンは目の前から消え、私の真後ろの木に
飛び乗っていた。
「俺らの家族は、ほかの同族と違って、人を狩らない。血に対する渇きも抑える術を
持っている。」
テヒョンは苦しそうな目を私に向けて言った。
「でも、君の血の匂いには我慢できそうにないんだ。これまでないくらい求めている。
……まるでドラッグのようにね。」
私はテヒョンの近くに駆けよった。
『…最近、私を避けてたのはそのせい？』
「…匂いに我慢できるかわからなかったんだ。……今も、ぎりぎり制してるけど、
いつ自制心を失うか…」
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作者名：ねこのひげ | 作成日時：2018年10月7日 2時
