最終話 ページ25
私が怪我をしてから、だいぶ時間が経った。
あれから私は学校に復帰することを決め、先生から許可が降りるとすぐに登校した。
担任の先生がもう説明はしてくれてたみたいで、私が記憶を失っていることはみんな知っていた。
それでもみんなとても優しく接してくれて、私は楽しく学校生活を送ることが出来た。
中でも私に特に優しくしてくれたのは、平松拓磨という人だ。
平松くんは、私のことをよく知っていて、私が少しでも円滑に生活できるよう、できるだけ長くそばにいて支えてくれている。
凜が、もうこの世にはいないことを知ったのも、平松くんが教えてくれたからだ。
自ら命を捨て、理由もわからないままいなくなってしまったらしい。
とても大切に思っていたはずなのに、もう会えないのは少し残念だったが、平松くんがそんなに気に負う必要はない、と言ってくれて、私は受け入れることが出来た。
彼にはとても感謝している。
でも平松くんは、たまに不思議なことを言う。
「本当にまだ思い出さないの?」
とか
「強運の持ち主だね。」
とか。
1番意味がわからなかったのは
「記憶を消すなんて...正当化にも程があるよ。」
だとか。
私に毒を吐いているのはなんとなく掴めたが、その意味は全くわからない。
時々不思議なことを言う人だけれど、優しい人であることに変わりはない。
私はほとんどのことを、平松くんが教えてくれる通りにして過ごしていた。
階段から落ちたという夜の前の記憶は、ほとんどないけど
周りの人があったかくて、優しくて。
これはこれで、いい人生だと思っている。
1度失ってしまったのなら、悔やんでも仕方がない。
失う前と同じぐらい、新しい記憶と思い出でいっぱいにしてしまえばいいのだ。
...とまあ、平松くんに言われたのだが。
なんだか私は彼に頼ってばっかりだ。
そろそろ自立する練習もしなくちゃ。
なんだかんだ言って、今の生活は楽しい。
来年は、大学受験にも挑戦してみようと思う。
せっかく手に入れた第2の人生、思う存分、生き抜いていこう。
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それから突然記憶を取り戻して、必死に隠しながら拓磨からの恐怖に怯える生活が来るのは、もう少しあとのお話。
誰もこの真実を、知ってはならない...
fin.
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時