知ってはならない。【3】

第115話 ページ20

「春美...」

体が痛い。

「春美」

声が聞こえるけど

「春美。」

体を起こすほど元気じゃない...

「よく来たね。」



「っ!?」

私はその声で、ガバッと体を起こした。

顔を上げるとそこにはやはり



「凜...?」



私の大切な

大事な

凜がそこで


ふわっと笑っていた。


「春美...久しぶり。」

優しい
懐かしい

大好きなその笑顔

「凜...凜なの...?」

私は思わず立ち上がった。

何度も瞬きをし、全身を眺めて目を見開いた。



「ふふ、春美おかしい。私が凜に見えない?あんなに仲良くしてたのに。」


そう笑う顔も
その言い方も
声も姿も手も


全部、凜に違いなかった。


「凜...凜っ!!」


私は凜に飛びついた。


「春美。怖かったね。会うのはもう少しあとだと思ってた。こんなに早く会えるなんて...」

「凜、ごめん。全部調べちゃったの。全部わかった。凜が隠そうとしてたこと、掘り起こした。ごめんね...本当にごめん。」

私は凜の言葉を遮って謝った。

ずっと凜に言いたかったこと。

それを早く、少しでも早く、伝えたかった...


凜はふぅ、とため息をつくと、ゆっくりと私を抱きしめ返して言った。

「春美...。大丈夫だよ。全部見てた。私のせいで、こんなぐちゃぐちゃな人生にしちゃって、ごめんね。」

私はぶんぶんと首を横に振って否定した。

「私が全部首を突っ込んで招いたことだから。あの人だって、きっと...」




あれ

おかしい

何かがおかしい。




「あの人?」



私は今






ーーー誰のことを言おうとしたのだろう...




「...いや、何が言いたいか忘れちゃった。ごめん、気にしないで。」

私は苦笑して凜に言った。

凜はそっか、と呟くと、ゆっくりと私から離れた。

「それにしても...すごい奇跡だよね。あのまま春美たちが結婚なんてしちゃってたら、私たち姉妹だったんだよ?」

「え...?」


凜は楽しそうに笑いながら、そう言った。

彼女はあくまでも冗談の様に言う。
まるで私も同じ気持ちを抱いているかのように。

でも、実際は違う。



私は



私は




ーーー何を言っているのかわからない...




「結婚って...私が?誰と?」

「え?」




どうして凜はそんなに驚くの?

私が結婚なんて、おかしいよ。

だってそんな人



私にはいない...

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