第113話 ページ18
私は
私は怖くて
逃げたんじゃない...
ぎゅっと目を瞑って、頭の中を空っぽにしようとした。
拓磨の声を、耳に入れないように
両手で頭を抑えて、何も考えないように...
「春美、わかってる?君は凜を悪者にして、自分を正当化してるんだよ。散々凜の過去を掘り起こしておいて、そんなことまでするの?」
「やめて」
「本当はここで全てを捨てるのが正しい。そう思ってるんでしょ?でも春美にはその勇気がない。だけど、それは受け入れたくない。正当化したい。ははっ、滑稽だよ本当。」
「やめてっ」
笑いながら近づく拓磨から、私は必死で逃げた。
聞きたくない
現実を突きつけられたくない
逃げたい
私は間違ってない
凜も私も、悪いことなんてひとつもない...
「春美っ」
「っ!?」
目を瞑って耳を塞いでただただ拓磨から逃げていた。
そのせいか今自分がどこにいるかなんて全く把握してなくて
拓磨が大きめの声で私を呼んだのに驚いて目を開けると、私は階段の目の前まで来ていた。
今声をかけられなかったら、落ちてた...
私は唾を飲んで顔を上げ、拓磨の方を向いた。
拓磨は既に私の近くまで来ていて、その顔にはずっと微笑を浮かべている。
私は
この恐ろしい男に
一生監視されるの...?
拓磨を恐怖の顔で見つめている私を、拓磨は嘲笑った。
そして...
「なっ」
再び、拓磨の腕の中に包まれた。
私は一瞬何が起こったかわからなくて、ただ硬直するだけで何も抵抗できなかった。
拓磨は私をぎゅっと近づけると、私の耳に囁くように言った。
「春美...。僕には手に取るようにわかるよ。春美が恐れていること。逃げていること。必死に自分を保とうとしていること。君の本望は、僕に監視されることじゃない。凜と同じ行動を取ること。でも春美は、怖くてそんなこと出来ない。僕にちょっとつつかれただけで、簡単に諦めて、後付けの理由まで作っちゃって。君はただの臆病者だよ。このまま僕に監視されて生きても、何も楽しくない。きっと君も、そう感じてる。そうでしょ?」
ーーーそうでしょ?
そう聞く割には、拓磨は私の答えを聞く姿勢にはならない。
彼の中で、確信してるんだ。
私が逃げていること
私に自ら命を捨てる勇気がないこと
それを彼は決して見過ごさない。
深く指摘して、私を最後まで追い込む...
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時