第97話 ページ2
拓磨の後ろに感じる、凜と同じ雰囲気。
同じ家庭で過ごし、ましてや双子だ。
似るに決まっている。
前まで愛しいと思っていた拓磨の笑顔も、今の私にはなんの感情も与えなかった。
「なんで突然、途中から協力的になったの?交通事故のことも、自分で調べてきたし。」
「春美を誘導しようと思ったんだ。もし春美より僕の方が先に調べてたら、春美は調べた気になって僕の情報をそのまま受け入れるかなって思って。事故の経緯とかは変えないで、人為的だってところだけ隠した。どうやら春美の調査能力を甘く見すぎていたみたいだね。」
目の前にいる人は、大切な凜を消した人で
憎くて、恨めしくて、逆に消してやりたいぐらいの存在のはずなのに
その人はあまりにも私と親密で、私も彼との思い出が無いわけじゃなくて
愛しいとか好きとか、そういう感情はもうどこかに消え去ってしまったけれど
予想していたとはいえ、未だに実感は湧かなくて
拓磨に対して、怒りたいような気持ちは、自分の中にはそんなに無かった。
それもまた、凜に申し訳なくて
複雑な思いが、私の中でうごめいていた。
私は無表情で、彼に聞いた。
「あなたが...火事を起こしたのね。」
「油を撒いて、火をつけたよ。僕の証言で揚げ物してた中の不幸な火事ってことになったけどね。」
「事故もね。」
「陥れようなんて思ってなかったんだよ。ただただ車の構造が面白くて色々いじってたら、あんなことになってしまった。父さんには申し訳ないと思ってるよ。」
何を聞いても、私が調べた通りの話が出てくる。
拓磨は、まるで他人事かのようにつらつらと喋ってくれる。
ここには何も、誰も、私を救ってくれる人はいない。
私は次々と、現れる真実に痛めつけられていた。
笑みは浮かべたままの拓磨。
私は、彼の顔をひたすら見つめていた。
聞くしかない。
聞きたくないけど、聞かない訳にはいかない。
私はもう一歩拓磨に近づくと、小さく息を吸って口を開いた。
そして私が最も悔やむ、許されぬ罪を、彼に問うた。
「...凜の居場所を教えていたのは、やっぱり、私なの...?」
私は、凜を消すのに、加担してしまっていた。
そうだということはわかっている。
わかってるけど、もしかしたら違うかもしれない。
潤む私の目に気づいたのか、拓磨は一瞬笑顔を崩しかけた。
でも直ぐに表情を建て直し、コクリと、小さく頷いた。
私の希望は、全てかき消された。
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (
レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです！他の作品も今から読ませていただきます！執筆、本当にお疲れ様でした！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)！改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fruit | 作成日時：2019年8月13日 23時
