第40話 ページ41
テレビを見ると、アナウンサーはショッピングセンターの外に出て、街を歩き回っていた。
少し時間が経つと、行ったことはないが、見覚えのあるラーメン屋さんを指さして、彼女は嬉しそうに笑っている。
まだ食べるのか、このアナウンサー。
そんなことを思いながら、私はメッセージアプリの拓磨とのトークを開き、直ぐにメッセージを打ち始めた。
《今拓磨が住んでるところテレビでやってるよ。全国番組かな、そっちでもやってる?》
先程とは裏腹に、誤字脱字など何も確認せず、流れるように送信ボタンを押した。
通知が来たらわかる程度の距離に携帯を置き、私はソファに体を委ねてテレビを見た。
ラーメンを食べ終わったアナウンサーは、やっとお腹がみたったようで、満足気な顔で道を歩いていた。
『続いては、地元の学生に話を聞いて、この街のオススメを教えてもらいましょう!...おっと、あちらに学生服を来た人がいらっしゃいますね。』
学生に話を...。
もしかしたら知り合いが出るかもしれない、なんてかすかな期待を胸に、私はテレビにかじりついた。
『声をかけてみましょう。こんにちは!』
アナウンサーが元気な声で言うと、声をかけられた女子高校生は少し驚いた顔をしてアナウンサーの方を振り返った。
この制服は知っている。
私が通っていた中学校からは、よく進学先に選ばれる高校だ。
アナウンサーに、再びこんにちは、と言われると、女子高校生は驚きを隠せないまま、優しい笑顔でこんにちは、と言い返した。
「え...この人」
アナウンサーに話しかけられる女子高校生を見て、私は驚愕した。
彼女は、同じ中学校に通っていた同級生だ。
普通に仲良く接していた。
そうか、あの高校に行ったんだ...
元気な姿を見れてよかったと思う一方、まさか本当に自分の知り合いが出るとは思っておらず、にわかに信じられなかった。
確かに、テレビに映っている風景をよく見ると、私の通学路であった道だった。
毎朝無意識に見逃していた景色が、突然鮮明に蘇り、変な気持ちになる。
そしてこの道は、拓磨の家の近く...。
女子高校生と歩くアナウンサーの周りを見ると、一瞬拓磨の住むマンションが映った。
タイミングよく拓磨が出てくるわけもないが、私はアナウンサーにも女子高校生にも目を向けず、拓磨の部屋をずっと凝視していた。
...ふと、凜の言葉が脳裏に浮かぶ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (
レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます！すんごい面白いし、好きです！！ (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fruit | 作成日時：2019年3月4日 22時
