第31話 ページ32
5年前の春。
ある日突然、少女は山田家に現れた。
「君は...誰だい?」
山田家主人の言葉に、少女ははっきりと答えた。
「凜です。下の名前だけど、凜って言います。突然で申し訳ありませんが、今日から私を養子に取っていただけませんか。」
あまりにも唐突すぎる出来事に、主人は驚きを隠せなかった。
半信半疑で、主人は少女に聞く。
「君は...自分が何を言っているのか、わかって言っているかい?」
「わかっています。ちゃんと仕組みも縁組の方法も調べてきました。訳あって事情はお話できませんが、全てこちらで手配します。なるべく迷惑はかけません。養育費も将来お返しします。ですので、どうかよろしくお願いします。」
そう言って、少女は頭を下げた。
困惑した主人はとりあえず少女を家に上げ、妻を呼んで話を聞くことにした。
「えぇ...今日から養子に?これはまたどうして...」
妻も当然訳が分からないという様子で、少女に語りかける。
しかし少女は、お願いします、の一点張りだった。
なかなか折れない少女に、主人は言った。
「養子に取ると一口に言ってもね、色々難しい手続きがあるんだよ。君は未成年だろう?そしたら家庭裁判所も通さないといけないし、そもそも代諾者と言ってね、第三者でこの養子縁組を承認する人物が必要なんだよ。その辺までわかって言ってる?」
少し疲れたような様子の少女。
そのほっそりとした頼りない体とは裏腹に、山田家の2人に厳しい視線を送り続ける。
「わかっています。その辺の手筈はもう既に整っています。」
依然そう言う少女に、今度は妻が言う。
「私たちだって、あなたを困らせたいわけじゃないのよ。どんな理由かは知らないけど、あなたが困っているのはわかったわ。見放すつもりもない。まずちゃんとあなたの御家族とお話をして、了解を得た上で、ちゃんとした手順を踏みたいの。養子にとるかどうかは、そこから始まる話よ。」
妻が言い終わると、少女は少し怯んだ。
姿勢が弱くなったのを見計らった主人は、今だと思い、言葉を続けた。
「とりあえず、君のご家族と話をしよう。いずれにしよ、スタートラインはそこだよ。」
口を固くつむんでいた少女は、少しその力を抜くと
まだまだあどけなさのある顔で、ポツリ、と呟いた。
「家族は...いません。」
初めて少女の本音が少し交じった声だった。
予想外の言葉に、山田家は沈黙に包まれた。
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fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (
レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます！すんごい面白いし、好きです！！ (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fruit | 作成日時：2019年3月4日 22時
