知ってはならない。

第21話 ページ22

表紙をめくると、そこには目次が載っていた。
眺めると、これらはどうも心理カウンセリングに関係する本のようだ。

当然、彼女が心理カウンセラーになりたいなどという話を聞いたことは無い。
理系である彼女は、確か理学部を志望していたはず。

ここにある本は、理学部にはほとんど関係のないものと思われるが...。

目次だけ読み、次の本を手に取った。
題名は、「心のケア」。
またも目次だけ見る限り、心を沈ませている人の対処法、鬱にならないための方法などが書かれているようだ。

凜は、誰かの相談に乗っていたの...?
その誰かの心をケアするために、これらの本を読んでいた...?

そこまで考えて、私は教室で拾ったものを思い出した。

ーー精神安定剤。


凜は精神安定剤を飲んでいた。
そう考えると、凜は自分で自分の心をケアしようとしていたとする方が自然だ。

心理的に沈んで鬱になりそうなのを必死に抑えるために、本を読み、薬を飲み、私たちには元気な顔を見せていた...?

そこまでになるほどに、何かに悩んでいた...?

凜に何があったの。
あんなに明るかった凜の裏で、何が起こっていたの...

「...あ」

ポツリ、と声を出しただけで図書室中に響いた。

凜の悩みの起源
精神を病む程に悩んでいた理由。

それが...

私は目の前にある本を取り、呟いた。

「戸籍...」

凜は戸籍や親族、相続のことで悩んでいた...?

でも、どうして。
両親とは問題も関係のこじれもなかったはず。
凜が悩むことなどない。
それは私が家に行った時に3人を見てわかるし、凜の部屋には家族との写真がたくさん飾ってある。

とても凜が家族のことで悩んでいるとは思えない...。

謎を追っていくうちに、謎が深まった。

凜の家族に何かあったのか
心を病むほどの問題があったのか

それとも、今もなお続いているのか...



私は、凜の貸出状態にしていた本を処理して返却済みにし、その後に私の番号で、凜がかつて借りていた本のうち数冊を借りた。

借りていない本を抱えて本棚にむかい、ひとつずつ並べていく。

心理関係の本を戻したあと、戸籍関係の本を戻そうと、反対側の本棚を見た。

コト、と一冊本を戻したとき、もともと隣にあった本の題名が目に入る。

「養子...」


...いや、まさかね。

私は自分の深読みに苦笑しながら残りの本を次々に戻していった。

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