第11話 ページ12
お待ちしているわ。
そう言われてもやはり躊躇うものは躊躇うのだ。
凜の家に電話してから2日がたった。
今日は終業式。学校は既に終わっており、時刻はまもなく15時を指す。
私はさっきからインターホンに指を置いたままだ。
いつかは押さないといけない。
そんなことはわかっているのだ。
でもなんとなく押せない。その勇気が出ない。
この怖がりがどこから来ているのかもわからない。でもとにかく押せない。
右腕に見える時計が刻々と時を進め、私を追い込む。
早くしなければ、心配をかけてしまう。
春美ちゃんが来ない、春美ちゃんが来ないと慌てるかもしれない。
インターホンを押さなければ...
私は大きく息を吸い、体にぐっと力を入れた。
よし。押そう。
そう決心を決め、そのボタンを押し込もうとした。
瞬間。
ガチャ
「あ」
ゴンッ
「え!?」
ガラガラッ
「あ...」
「え」
今の一瞬でいろんなことが起きた。
私がインターホンを押そうとした瞬間、突然玄関のドアが開き
驚いてまもなく思いっきりそのドアに頭をぶつけ
今度は凜のお母さんが驚くと
足元がふらついた先に子供用のじょうろがあり
それを蹴飛ばしてしまい、凜のお母さんが再び驚いた。
「ごめっ...んね、春美ちゃん、大丈夫...?私全然気づかなくて...」
「いえいえ、こちらこそすみませんっ」
私はそう言いながら慌ててじょうろを元の位置に戻した。
「すみません蹴ってしまって...この場所でいいですか?」
そう言ってお母さんの方に顔を見上げると、お母さんは哀しげな顔をしてええ、と返事した。
私は立ち上がり、スカートをパンパンとはたく。
すると、お母さんは玄関のドアを開けて私に中に入るよう勧めた。
「外は暑いわ。中に冷たいお茶を用意してるから。」
私はありがとうございますと一言言って中に入った。
「お邪魔します...。」
この家に入るのは、何回目だろう。
もう見慣れたはずなのに、凜がいないというだけでとても広々と、寂しくなったように感じる。
どの部屋に入るのか迷って、ふとお母さんの方を振り返ると、お母さんは自分の靴を揃えながら呟いた。
「あのじょうろはね、娘が小さい頃育ててたお花に、自分で水をやる時に使ってたものなのよ...。」
そうですか、とも言えずに、私は黙ったままお母さんを見つめてしまった。
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fruit(プロフ) - 鳥の子さん» うわぁぁぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!そして読みに来てくださってありがとうございました!!自分の作品をこんなに好きって言って貰えるとすごい嬉しいのですね...いますごくテンション上がってます笑コメントもしてくださってありがとうございました!! (2020年1月26日 0時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
鳥の子(プロフ) - 一通り読んで参りました……!好き……。余りにもLOVE過ぎて……。もう説明文の所から夢主ちゃんの覚悟が伝わってきて、けれど最終的には後悔してしまうのだろうな(覚悟ほしていたけれど)とか思っちゃうとLOVE……。更新頑張られてください!! (2020年1月18日 17時) (レス) id: fababa1230 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 凛奈さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!!凛奈様のような読者様がいらっしゃるので頑張れるわたくしです。これからもどうぞよろしくお願い致します!! (2019年5月28日 17時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
凛奈(プロフ) - 更新楽しみにしてます!すんごい面白いし、好きです!! (2019年5月28日 6時) (レス) id: 225bb681ca (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 花風雪 サブありさん» うわぁぁ嬉しいコメント!!!読んでくださって本当にありがとうございます!!!今はテスト前で少し更新をお休みしていますが、来週からまた再開します!まだまだ続きますよ〜!?これからもよろしくお願いいたします!!! (2019年5月26日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年3月4日 22時