第六幕 雷の魔女 ページ39
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アンバーと一緒に騎士団本部に戻り、団長室の向かいが図書室の入口だと教えてもらって別れる。
扉を開くと、そこに広がるのは本棚の森。
黒陽は息を飲み、目を輝かせた。
どこか懐かしい感覚と共に心が躍る。
「あら、黒陽ちゃん」
「こんばんは、リサ。どうして……ああ、君はここの司書という話だったか」
「ええ。借りたい本があったら言ってちょうだいね」
彼女は読んでいた本を閉じ、にこりと微笑んだ。
「君は何を読んでいるんだ？」
「大した本じゃないわよ、そうね……黒陽ちゃんは、どんな本が好き？」
質問を質問で返され、黒陽は目を瞬かせる。
リサが面白そうに読んでいたから、さぞ面白い本なのだろうと思っただけなのだが。プライバシーに欠けた質問だったかもしれない。
「そうだな……『神霄折戟録』だろ、『砕夢奇珍』も好きだし、『帝君遊塵記』も好きだ」
「ふふ、ノンフィクションより小説が好きなのね」
くすりと笑って、彼女は図書館の奥へ歩いていく。その後を追って一階へ降りると、階下は更に魅力的な光景を晒していた。
「それなら、『少女ヴィーラの憂鬱』と、『イノシシプリンセス』がおすすめよ」
リサから手渡された本は、冒険小説と童話。人間の記した物語が大好きな黒陽はフィクションならなんでも好みだったが、中でもアクションの多い冒険小説や武侠小説には心が躍った。
実のところ、体を動かすのが好きなのだ。
最も手っ取り早く体を動かす方法は戦闘である。
でもそれを喜んで引き受けるのは、畑のカカシか、訓練用の人形、あるいは公子くらいのもの。
……公子で思い出した。
騎士団は、黒陽がファデュイに狙われている理由を不思議に思ったりしていないだろうか？
「リサ、モンドにいるファデュイの行動は活発か？」
それとなくファデュイの名を口にすると、彼女の顔つきはほんの少し真剣になった。
閲覧席に座るよう促され、リサの向かいに腰を下ろして本を置く。
「龍災のことは、栄誉騎士から聞いているかしら」
「ああ……ファデュイについては聞かなかったが」
「そうなの？ ファデュイは風魔龍を浄化するのではなく、殺そうとしていたのよ」
彼女曰く、モンドを襲ったトワリンに対し二の足を踏む騎士団の代わりにトワリンを殺してみせる、と言い放ったとか。公子っぽい ( 別人らしいが ) 。
「今は大人しいから、安心していいわ。わたくしからも訊いていいかしら？」
「ああ」
「ソフィートって、知ってる？」
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作成日時：2021年8月1日 1時
