第二幕 真意 ページ14
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再び夜を迎えても、黒陽は目を覚まさなかった。
魈の姿もどこにもなくて、オーナーも居場所を知らないと言う。
「なあ……空、オイラたち、間違えたのかな……？」
パイモンが黒陽を見て悲しげに呟く。
「……俺は、間違ってないと思うよ」
これは慰めなんかじゃない。
魈と黒陽の間には何か因縁があって、でも、それは解消されるべきものだ。
「だから、まずは魈を探そう」
「でも、どうやって……？」
正直、作戦は何もない。
魈が仙人である以上、俺たちの追跡を撒くことなんて簡単だろう。
だったら。
「妖魔を祓ってるところを狙う」
「なるほど、悪くないな！」
元の調子に戻ったパイモンに笑みを向け、もう一度目覚めない黒陽を見て、部屋を後にする。
テラスから風の翼を使い飛び立つと、荻が生い茂る中洲の方で戦う魈が見えた。月明かりがその姿を浮かび上がらせている。
妖魔に憑かれたヒルチャールは、もうほとんどが倒されていた。
剣を突き立てて翼を畳み、最後の一匹を仕留める。
「邪魔をするな」
「断る。黒陽と何があったか教えてくれるまで、魈を追いかけ続ける」
彼は不快そうに眉をひそめ、槍をしまう。
「……黒陽は起きたのか？」
「まだ」
「なんだ、やっぱり心配なんじゃないか！」
パイモンにしーっと合図を送り、彼の返事を待つ。魈の沈黙は幸いにも長くはもたなかった。
「業障は、知っているな」
俺は魈が腰につけた儺面を見、頷く。
魔神の残滓たる妖魔を祓う護法夜叉──魈が、逃れられない呪い。周囲の魔物を強化したり、凶暴化させたりしてしまう呪い……あっ。
「だから……黒陽を遠ざけたい？」
「そうだ」
「んぇ？ どういうことだよ？」
「……まだあいつは『魔』だ。業障の影響を受ける」
魈は溜め息を吐きつつ、パイモンのために説明し直してくれた。
「以前、それで璃月の民は恐怖に陥れられた」
……あれ？
「国土の三割が常に雷の止まない地になり、荻花州は更地になり、孤雲閣のそばにあった島は消し飛んだ」
思っていた話と違う、ような。
黒陽が暴走したら殺さなければいけないから、近付けるなと言っているんだと思ったのに。
これでは、暴走した黒陽は魔神みたいな力を振るって破壊の限りを尽くすから、みたいじゃないか。
「岩王帝君をはじめ、我や他の仙人もあいつを殺そうとした。だができなかった。故に、封印したのだ」
彼はぐっと拳を握り、歯痒そうに目を伏せた。
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作成日時：2021年8月1日 1時
