再訪 ページ26
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璃月港に着くころには、ちょうど夕食の時間になっていた。
このあいだ訪れたときも、このくらいの時刻だったな。
三杯酔を覗くと、彼は講談を聴きながら茶を飲んでいるところだった。夕食を済ませて小休憩、といった感じ。
「こんばんは」
「ティアか。その様子だと、ブエルには会えたようだな」
彼はやわらかく微笑んで茶器を置いた。
向かいに腰を下ろし、同じく破顔して返す。
「そのことなんだけど……」
私は頬をかいて、全てを洗いざらい話した。
記憶を復元したこと、あなたと共に酒を酌み交わした記憶も取り戻したこと、以前の無垢な自分を泊めてくれた礼も。
「ありがとう、鍾離さん。あなたが無理やり思い出させようとしなかったこと、嬉しかった」
「お前が継承ではなく再生していると、知らなかっただけだ。礼を言われるようなことではないが、そうだな。それを知っていても、俺はお前を泊めただろう」
かつての私は彼を鍾離さんと呼んでいて、彼は私をティアと呼び、比較的良好な関係を築いていた。
何度も再生していることが露見した私は、教令院から逃げるとき、国外に逃亡することもよくあった。
そうしたとき、鍾離は私を追っ手から匿ってくれた。
思えば、多くの人に助けられて生きてきた。死んで、再生して、また新たな人生を歩むうちに、本当に。どれだけ感謝を伝えても足りないくらい。
「顔を思い出したから、あなたが言っていた通り、酒を交わしに来たんだ。ボクと飲んでくれますか？」
鍾離は鷹揚に頷き、店員に酒を頼んだ。
「酔わない程度にな。お前は酔うと手に負えなくなる」
「このあいだもそうだったろ」
「違いない」
二人でくすくすと笑い合い、すぐに運ばれてきた酒に手をつける。先に酒器を取り、鍾離の小さな器に注ぐ。交代で私の器にも注いでもらう。
「何に乾杯する？」
鍾離は穏やかな微笑をたたえたまま、そう言った。
「岩と砂、でどうかな」
「安直だな。だが、悪くない」
「ふふ、よかった。じゃあ、岩と砂に」
「岩と砂に」
器を掲げ乾杯として、酒に口をつける。これはパイナップルのような香りがする、あっさりした料理に合う酒だ。やわらかく、さっぱりとした味わいが特徴。
クセがないぶんぐびぐび飲めてしまうわりに、度数が結構高いので、ちょっと注意しなければならない。
私たちは酒を交わし、昔話に花を咲かせた。
私はスメールを出たことがあまりないけれど、それでも隣国璃月の記憶はたくさん持っていた。
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
