巡礼をもう一度 ページ16
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「そういえば、オイラたち砂漠に向かってるけど……おまえが生まれた場所って、アアル村じゃないのか？」
パイモンが私のそばをふわふわ飛びながら尋ねる。
そういえば、彼らには言っていなかったっけ。
「おれ、キングデシェレトの霊廟で拾われたんだ。だから、そこがおれの生まれた場所ってことになってる」
旅人は驚いたように目を見開き、パイモンに至っては口を大きく開けていた。まあ、普通はそういう反応になるか。
キングデシェレト霊廟は謎と危険に満ちている。
聖顕角柱、秘儀台座、常光ユニット、擬造基石にプライマルオベリスク……挙げればキリがない。
そんなところに赤子が捨てられればどうなるかなんて、火を見るより明らか。なのに、私はこうして生きている。
「具体的には、どのあたりだ？ 霊廟の中だろ？」
「輪転の間って場所だ。そこで、おれは見つけ出された」
霊廟が見えてきた。
ここで、私たちは出会った。
私の人生も、ここから始まった。
なんだか感慨深くて、自然と笑みが浮かぶ。旅人に助けられたのはついこの間なのに、ずっと昔のことのように感じる。
「オイラたち、結構霊廟を探索したけど……そんな場所なかったぞ？」
「隠されてるからな。カラム……
足を踏み入れると、旅人は輪転の間を探してか、辺りを見回し始める。
旅人が取り出した石板には、キングデシェレト文明の文字が刻まれている。赤砂の石板だ。
「旅人、どこでそれを？」
「これ？ ティルザードって学者から譲り受けたんだ」
「ティルザード？ ティルザード・ヒンディ？」
ティルザードといえば、最近発表した論文『黄金の眠り』が革新的だったと評判な、因論派の学者。
「知ってるのか？」
「ユフィの親戚だろ、知ってるよ。元気かな、彼女」
ユフィは因論派の学者で、私の友人だ。風の噂では、砂漠で恋をしてその男と結ばれたらしいが……詳しいことは何も知らない。私も自分の研究で忙しくしていたからな。
「ユフィは……」
旅人の表情が曇り、それだけで私は全てを察する。ユフィは死んだのだ。おそらく、誰かに殺されて。
「そっか……悪い、変な空気になっちゃったな。輪転の間は、こっちだ」
私はにこりと笑って、何もない壁の前に立った。
持参した鞄から石板を取り出し、壁にかざす。
石板に反応した壁は音もなく消えていく。
「行こう」
先に広がるのは、私の生家とでも言うべき場所だ。
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
