砂漠の星、妙論派の星 ページ12
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旅人から、スメールに起こったことを詳しく聞いた。
セノが大マハマトラに復職したこと、アルハイゼンが賢者に推薦されて断ったこと、カーヴェがシティに戻ってきたこと……など。
稲妻で私を捕らえた『博士』は、義体の一つだったようだ。同時にいろいろな場所にいられるとは、便利そうな機能である。もっとも、その義体もナヒーダとの取引によって廃棄されたらしいが。
「ん？ ティアじゃないか！」
ランバド酒場を訪れると、思った通り彼がいた。
「久しぶりだね、カーヴェ。元気だったかい？」
「もちろん。それより聞いたか？ アルハイゼンが賢者の推薦を蹴ったって……」
「聞いたよ。おれも賢者に推されたけど、断った」
「君もか？ なんで受けなかったんだ！」
カーヴェはジョッキを机に置き、私に向かいへ座るよう手で促す。そのとおりにして、私も酒を頼んだ。
「研究もしてないおれが賢者になんかなったら、真面目に研究している学者たちが可哀想だろ」
「む……けど、君が賢者になったら、みんな納得するはずだ」
「おれの過去の栄光を知る学者はそうだろうが、他の……野心ある学者は、そうはいかないだろうな」
注文するまでもなく私の顔を見て用意されていたのか、すぐに冷浸蛇酒が運ばれてくる。私はそれに口をつけ、笑った。
カーヴェも、私の言い分に納得した様子で腕を組む。
「それもそうか。じゃあ、これは知ってるか？ 君がヴィクラムとリファエットを押しのけて、次のグランドキュレーター候補になってる」
「はぁ？」
グランドキュレーターは、知恵の殿堂の館長を指す。
アーカーシャ端末が停止した今、論文のための資料はすべて知恵の殿堂から得なければならない。
つまり、アーカーシャ停止以前よりも知恵の殿堂の重要度は上がっているということ。
そんな知恵の殿堂の館長候補に、私が？
「何かの間違いじゃないのか？」
「いや、事実だと思う。僕はもちろん君を推すよ」
「よしてくれよ……一日中知恵の殿堂で申請の許可を出し続ける人生なんて、退屈すぎて二日で逃げ出してしまう」
はあ、と溜め息をつく。
からから笑って、カーヴェは酒を飲んだ。
「人事課に行って断らないとな……」
「いいじゃないか、受ければ！ 君が館長になったら僕の申請を優先的に通してくれるだろ？」
「仮になっても、そんな不公平はしないね」
「ちぇー」
「ところで、今日は財布が潤ってるみたいだな？」
「砂漠でしてた仕事の報酬があるからね。あ、おかわり！」
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
