砂漠の星、妙論派の星、書記官 ページ13
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閉店時間になって、カーヴェたちはほとんど泥酔同然の状態で放り出された。
閉鎖されないテラス席で夜風に当たって、カーヴェはお迎え───もとい、アルハイゼンを待っている。
酔って火照った顔に、冷たい風は気持ちがよかった。
イティアメネウはひやりとした机に頬をくっつけている。
「あ……カーヴェ、きたぞ」
トレジャーストリートを下ってきたアルハイゼンを見て、眠りかけているカーヴェの肩を揺さぶる。
カーヴェは意味のない呻き声を上げたあと、アルハイゼンに向かって片手を上げた。
「ハァ……君はまた、イティアメネウに迷惑をかけたのか」
「メーワクじゃないよ、アルハイゼン……それより、ナヒーダのこと、ありがとな」
「……ああ」
アルハイゼンが酔っ払ったカーヴェを回収しに来ることは、たびたびある。
その多くはカーヴェとイティアメネウが席を共にしているときで、おそらくイティアメネウに迷惑をかけられない、と考えているからだろうと思われた。
はあ、と溜め息を吐いて、アルハイゼンはカーヴェの腕を引っ張った。
「二人とも、飲みすぎだ。アルコールは脳を萎縮させる。知らないわけではないだろう」
もちろん、知っている。
しかしそれ以上に、アルコールがもたらす多幸感は、イティアメネウを惹き付けてやまなかった。
「でも酒ってうまいんだよ、なあカーヴェ？」
「この堅物にそんなこと言っても無駄だよ、ティア。こいつが一度だって酒を飲んで美味いって言ったことがあったか？」
「生憎だが、君の言う通り、酒を美味だと感じたことはない」
行くぞ、と言ってぐいぐいカーヴェの腕を引っ張るアルハイゼン。カーヴェは再び意味を持たない呻きをこぼし、ゆらりと立ち上がった。
「じゃあ、また……ティア」
「ん……またな、カーヴェ」
酔ってへろへろになったカーヴェは、素面のときのように、アルハイゼンと喧嘩することは少ない。イティアメネウの前ではあまり喧嘩しない、と言ったほうが正しいだろうか。
ランバド酒場で食器を割るほど激しく殴り合いの喧嘩をしたこともあるらしいが、そんな凶暴な二人を、イティアメネウは見たことがなかった。
さて、そろそろ自分も帰らなければ。
ふらつく足取りでなんとか立ち上がり、街頭に掴まりながらトレジャーストリートを上っていく。
足を滑らせた。
頭をぶつけるかも、と目を瞑ったが、衝撃はやってこない。
「そんなになるまで飲んだのか？ ……ハァ、お前ってやつは」
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作者名：荒矢式 | 作成日時：2022年11月18日 4時
