Episode 024：数式の集合体 ページ30
本日の練習も無事終了した。
思わぬゲストの乱入により、Aはいつもより少しだけ疲れて見える。
Aはいつもの如く釣竿とバケツを持って波止場へと赴き、釣竿を垂らしながら紅く染まりゆく景色を眺める。
「……少しいいか？」
そんなAの背後に立ったのは……
「やぁ、鬼道くん。君は本当によく俺の元に来るね。もしや俺に惚れた？」
鬼道は表情を変えることなくAの横に腰掛ける。
「お前に少し聞きたいことがあってな」
「いいよぉ。なんでも聞くといい」
全部答えるとは限らないけどね、と小さく付け足すA。
「お前はなぜ俺たちを助ける？」
「……」
その問いかけに、Aは普段の笑顔を一瞬だけしかめた。
「……この前言ったろ。弱い相手とは戦いたくないんだ。そのために俺の相手になるぐらいの力を蓄えさせているだけさ」
「……お前は何か考えていないか？」
Aは思わず目線を釣竿から鬼道へと変えた。
「もっと深い目的があるはずだ」
ひとつため息をつき、釣竿を置くA。
「君って本当に頭が切れるよね」
「それはお前もそうじゃないのか？」
互いに微笑を浮かべる。
「そうだね。君なら分かってくれそうだから話すよ」
開口一番に何を言うかと身構える鬼道。
「サッカーっていうのはね、数式の集合体なんだよ」
しかしAの第一声はその予想をも凌駕するものだった。
「全ての動きは数式に当てはめることができる。それも、洗練されたエリートであるほど数に縛られていて、規則正しい動きをする」
ほう、と興味を抱く鬼道。
「そう、一般的に優秀と言われる選手は皆等しく数式の下僕なんだよね」
下僕。
かなり強烈な言葉を選ぶのだな。……鬼道はそう思ったが口にはしなかった。
一切の邪魔を入れず、もっと彼の論を聴きたいのだ。
「全員が『こうあるべき』という公式に則って動くから、攻略法なんてすぐに導き出せちゃうんだよ」
数式に縛られた選手と、数式に縛られた選手とが戦う……なんて退屈なんだろうね。
どこか嘲るような、しかして儚げな笑みを浮かべるAに、思わず鬼道は惹かれた。
「俺が見てきた選手はどいつもこいつも『サッカープレーヤーはこう動くべき』というマニュアルをそのまま実践しているだけの奴ばかり。動きに意外性というものが全くと言っていいほどない、つまらない連中だ」
Aは続ける。
「どれほど優れたプレーヤーでも実力がニュートラルなもんだから、世界に出るとすぐに埋もれてしまう。……君たちにはそうなってほしくないんだ」
鬼道は彼の意図を少しずつ理解し始めていた。
Episode 025：真の目的→←Episode 023：クールジャパン
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いづう(プロフ) - ハニートースト 通称，ハニトン！さん» 今見ました！申し訳ありません、なぜか夢野くんのイラストは表示されず見れませんでした…（；＿；）でも琴平くんは見れました！やばいです！かっこいいい！！！まさか琴平も描いて頂けるとは感激です！！ありがとうございました！！ (2018年11月13日 19時) (
レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 描けました！是非っ！！ (2018年11月13日 18時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - いづうさん» ま、マジですかっ？！お恥ずかしい…では、喜んで描かせていただきますね！ (2018年11月13日 18時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
いづう(プロフ) - ハニートースト 通称，ハニトン！さん» ええええ！？本当ですか！？嬉しいです！実は以前ハニトンさんのイラスト集を拝見させて頂いておりまして、上手だなぁ…と密かに思ってたんです！ぜひぜひ描いてください、こちらこそお願いします！ (2018年11月13日 18時) (レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - いづうさん» 一応wまたまた質問なのですがいづう様の作品の男主さんを描かせていただいてもよろしいでしょうか…？イケメンすぎてほんと辛いんす！ (2018年11月13日 17時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
