#2 ページ11
『すまん、ファミチキになってた』
「……元気そうで何よりです」
『おう』
『カノジョと電話すんなら出てけ!』という陽くんの声ともに、扉を閉める音がした。どうやら追い出されてしまったらしい新くんは、『やばいって、俺今夜1人じゃ寝れない』なんて言っている。
『A、今からツキノ寮来ない? 一緒に寝てくれ』
「色々無理があるでしょ……私ももう寝るよ?」
『本日お誕生日ボーイの新くんを見捨てるのか!?』
「お誕生日ボーイの新くんはおいくつですか」
『24歳でーす』と低くてのんびりした声。まったく、20歳の頃から全然変わらない。ホラーが苦手なところも、マイペースで少し掴みづらいテンションも。
「24歳なんだから1人で寝てください」
『無理。怖い』
「なんでホラーなんか観たの……?」
くふふ、と笑いが零れる。変わらないなぁ。話していたらいつの間にか元気になれるところも。そんな君が、私はずっとずっと好きなのだ。
「じゃあ、寮には行けない代わりに、新くんが眠くなるまで電話繋げといてあげるよ」
『まじか。俺は今キンキンに目が冴えているぞ?』
「あはは、私が先に寝ちゃうかもね」
現に、暖かい布団と穏やかで低い声のせいで、私の瞼は少しずつ重くなってきている。
今日も忙しかったからなぁ……。ふわぁ、と零れてしまったあくびに、『絶対Aが先に寝るじゃん……』と少し拗ねたような声。
「新くん」
『ん?』
「週末のお祝い、何食べたい?」
『……そうだな、とりあえずショートケーキだろ? いちご増し増しパンケーキとかどうだ?』
「甘いのばっかりだなぁ。太る……」
『俺としてはふっくら女子も好きです』
「切るよ」
ぼそりと呟けば、『えっ待ってAさん、酷くない?』と焦った声。OSめ。
変わらない君と、この先の誕生日も変わらず隣にいれますように。
「新くん、お誕生日おめでとう」
『おう。24歳もよろしくな』
「こちらこそよろしくね」
スマホから聴こえる心地よい声に、目を閉じる。
お誕生日おめでとう。君にとって、ステキな1年になったらいいな。
『……A? 寝た?』
黙り込んだ私に、恐る恐る問い掛ける声。ふわふわした意識の中聴こえてきた新くんの声に、口角が上がった。
結局、新くんもその後寝落ちしてしまって、目覚ましの音で起きるまで通話が続いていた、と気付くのは数時間後の話だ。
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