186、獣と仏 ページ27
場所はソフィアの所へと戻る。
シルバとソフィアは轟音を響かせながら森の中を縦横無尽に移動して攻防を開始していた。
だが、戦況はソフィアの独壇場と言えるのが現状だ。シルバは現在なんとかして撒くことはできないかと思考を巡らせては見つかってを繰り返していた。
ソフィアの練を受けた瞬間、シルバは逃げの体勢に入った。久方ぶりにまともな恐怖を味わったためだ。
森の木々をなぎ倒し、突風を生み出し、地鳴りを響かせるソフィアの練。拡散する生命力を受けて地面から雑草が伸びていた。
殺気を含んだそれを向けられれば、まるで腹をすかせた龍の眼前に差し出されているかのような、抗い難い恐怖に襲われた。シルバが屈しなかったのは練をしていたからでもあるが、ひとえに今まで積み重ねた人生の重さ故。
シルバは完全に眠っていた龍の尾を踏んだのだ。
絶をして長い距離を走るシルバは、最初に仕掛けた場所の近くに身を潜めた。木々は軒並みソフィアの練を受けて折れているが、だからこそ身を隠しやすいと考えてのものだ。
だが。
「──」
笑みを浮かべたまま、だが感情も何も読めない赤い瞳を宿す女が近くに現れる。それだけでシルバの口内に血の味が広がった。
ソフィアはオーラの量が他生物と比べて桁違いと言える程に多い。普通の念能力者の練ですら常人には気絶、最悪死ぬかもしれないものであるというのに、オーラ量が膨大なソフィアが練をすればどうなるか。
彼女の前では、常人は間違いなく死ぬ。普通の念能力者ですら意識を保てるかどうか。
その状態のソフィアの猛攻を受けてシルバが無事なのは、彼女が無意識の内に攻撃を手加減をしているからである。
ソフィアにその自覚はない。完全に我を失って敵と認識したシルバ一人のみを狙っている。
彼女は己の獣性に呑まれかけていた。およそ人としての知性を捨て、本能のままに能力を使っている。そして……それを見ている者が、この場には複数人いた。
ふと、シルバに拳を叩き込もうとしていた動作を止めて彼女が上空を見る。
直後に上空を飛行していた船から落下してきたそれを避け、ソフィアは落下してきたものを見た。
「そこまでじゃ」
落下してきた人物、ネテロの制止にソフィアは答えない。ただ、笑みを深くした。
「随分と獣らしくなりおって。言葉も忘れたか」
ならばとネテロは唸るように言い、常人の目には残像すら見えるほどの早さで両手を合わせた。
即ち、合掌。
「百式観音。喰らわせてやるよ」
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ユウ - 一気読みさせてもらいました。応援してます。ヒソカ落ち希望です! (9月18日 1時) (レス) id: 9180eb740d (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 更新待ってます!!続きがとても気になります!!イルミ落ちがいいです! (2022年6月6日 0時) (レス) @page32 id: b76b8db090 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 作品読ませていただきました!!とても面白くてこのシリーズ大好きです!もし、この作品がまだ更新されるのであれば、気長に待ってます!頑張ってください!! (2021年1月30日 18時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 初めて作品を読ませていただきました!私はこのシリーズがとても大好きになりました!もし、作者様がこの作品を覚えているのであれば更新されるのを楽しみに待っています! (2021年1月1日 21時) (レス) id: 5e84d40654 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - このシリーズ大好きです!更新待ってます! (2020年3月24日 18時) (レス) id: 94544c805e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロ | 作成日時:2019年9月4日 4時