秘密の存在４【H×H】 (ページ37)

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１５７、手を伸ばせば届くならページ37

【ソフィア side】

嬉しそうに騒ぐ彼らを見て、ほっと息をつく。同時に本来の自分に近付いたせいか、自分の感性が昔とは大分違っていることに気付いた。
死は自分にとって眠り。それは変わらない。
だけど自分に対してのヒソカやイルミ、フェイタンに対しての旅団を見ていてやっとわかった。人間にとって、死は生ある内の永劫の別れ。どれだけ覚悟していても予期せぬ別れは哀しみを生む。

その予期せぬ別れを防ぐ力が自分にあるなら。例え秘匿しなければならない力だったとしても、手を伸ばしたい。
これはただの自分勝手な我が儘だ。私の知る人たちに笑っていてほしいという、自己中心的な想い。

「移動するぞ」

声をかけられて顔をあげれば、クロロが目の前にたっていた。「ここは雨が入るからな」と呟いた彼のコートは確かにずぶ濡れだ。

「どこに行くの？」

「俺の部屋だ」

「荷物はどうしたら良いかしら」

「ああ……俺の部屋の隣に運んでおけば良い。どうせ使っていないからな」

運ぶか、と言われて荷物を分担して持つ。ちなみにウボォーギンとフェイタンは先に彼の部屋に、フィンクスとノブナガはご馳走の調達に、マチとパクノダとシャルナークはお酒の調達に向かったらしい。

「感謝はする。だが謝罪はしない」

謝罪……何に対してだろう。首を傾げると、クロロは正面を向いたままうっすらと笑みを浮かべた。

「俺達は、蜘蛛だ。蜘蛛のために生き蜘蛛のために死ぬ。手足も、時には頭ですらも旅団のためなら切り離す」

改めて凄い集団だと感じる。個人よりも組織を優先し、誰もがそれをわかっている。
理解しているからこそ誰も何も言わなかった。理解しているからこそ誰も表に出さなかった。きっとフェイタンも、わかっている。

「だから、個人の意見は通せない」

何となく話が見えてきた。要するに、クロロの意思を聞いたことに関して謝罪はしないといったところなのだろう。

「私は私のやりたいようにしただけよ。できるかどうかもわからなかったし」

開かれた扉に体を滑り込ませながら、それに、と続ければ彼は静かに先を促した。

「貴方達が個人を優先できないのなら、私が個人を優先すればいい。そうでしょう？」

クロロが何やら眩しげに目を細める。同時に隣の部屋からウボォーギンの歓声とシャルナークの慌て声がして、どうやら酒調達班が帰ってきたのだと知る。
行くぞと端的に言う彼に、とりあえず今一番私がやらなければいけないことを伝えた。