秘密の存在４【H×H】 (ページ35)

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１５５、一筋の光はあまりに眩しくページ35

女はノブナガの治癒を申し出て、アイツの傷を癒したらしい。
会話を聞いただけで実際ワタシの目はずっと団長に向いているからわからないけれど、ノブナガが礼を言ったのが聞こえた。
続いて女はワタシのことを団長に聞いた。団長は口には出さず、しかしはっきりと言外に殺すと含んだ返答をする。

(それでいいね)

機能不全を起こした自分をずっと押さえつけるために他の手足や頭を煩わせることなんてない。
毒に侵された手足は切り落として、新しいものに替えればいい。丁度空き番ができるのだ、この女にでも入ってもらえば良いと思う。癪だが腕は確かだ。

女が目の前に立ち、じっと顔を見つめてくる。ワタシの身体は殺気を向けた。

(何する気か)

「何をする気だ」

ワタシの思考と団長の言葉が重なった。ほんの少しだけ嬉しい気持ちになるが、生憎とそんな状況ではない。
女は答えず、逆に質問で返した。……本当に生意気な女だ。身体が自由だったらねじ伏せているのに。

殺せ

頭に響く声の合間に聞こえた、真意を暴くような言葉に、団長の声に怒りが滲んだ。
それだけで本当はワタシを殺したくないのだと、本当は助けられるなら助けたいのだという意思が伝わってきたような心地になる。

(ワタシだて、もと蜘蛛の役に立ちたかたよ)

けれどこれでは足手まといになってしまう。足手まといになるなんて死んでも御免だ。
だから殺してほしい。団長の手で、自ら。

殺せ

本当に頭に響く声が煩わしい。
早く殺してほしいのに女はその場から退かなくて苛々する。静かに、ただ静かにワタシを見ている目は何を考えているのかわからない。
早く退け。そう思う前に。

女の瞳孔が縦に、裂けた。
それどころかオーラは纏のままなのに存在感が増していく。それは圧倒的と言える程に。徐々にオーラが黄金の光を放ち始めた。最初眩しいと思ったそれは、目になれてくると優しげな色合いを放っている。

”フェイタン”

頭の中に女の声が響く。目の前の女は口を開いていないのに。

”フェイタン、貴方の意思で動きなさい”

(何言てるか、出来たらとくにやてるよ)

”貴方の意思は何”

(蜘蛛のために生き、蜘蛛のために死ぬことね)

”貴方の意思で動きなさい”

(だから出来たらやてるよ──)

”動けお前の意思で”

いつのまにか、頭の中に響いていた影法師の声が消えた。
いつのまにか、自分の体から力が抜けていた。
いつのまにか、ワタシは体の自由を取り戻していた。