１２２、蜘蛛の手足に捕らわれて ページ2
驚いたように目を見開いたクロロはすぐにセイ……シャルナークと呼んだ男の方へと視線を向けた。
フェイタンの反応からしてなんとなく察してはいたが、セイというのはやはり偽名だったらしい。
「シャルナーク、面白い戦利品とはこいつのことか。よく見つけたな」
「こんだけ目立つ容姿中々いないからね。街中で見つけたときは驚いたよ」
「街中で？ どうして……いや、ともかく此処から離れるのが先だ」
短い応答を聞くや否や、さっと側まで寄ったクロロにあっという間に横抱きにされる。突然抱えあげられるのに慣れてしまった。主にイルミとヒソカのせいだと思う。
腰に手を添えていた、というよりは逃げないように手を回していたシャルナークが気の抜けた声を出した。と思った瞬間に一気に建物の外、路地裏、屋上へと景色が変わり冷たい空気が肌を撫でた。
私一人を抱えているのに、それを感じさせない早さ。あの二人と関わりを持っていることが納得出来る人物であることは確かのようだ。
他の者達も同じ速度でついてきているらしく、微かに足音と布のはためく音が聞こえる。
「団長、貴方がソイツ抱える必要ないね」
「逃走防止だ。シャルよりは俺の方が立て直しが早いし、俺よりはお前達の方が戦闘向きだからな」
「……了解」
景色がどんどん流れていって、居住区のような場所の屋根上を駆けていく。ゾルディックの執事達の気配はいつの間にかなくなっていた。振り切ったとは考えにくいけれど。
目を動かして景色を見ていると、振り返らずに前だけを見て走っていたクロロがふと私を見下ろした。
「……随分と大人しいな？」
「貴方と私の初対面を思い出せば納得出来るんじゃなくて？」
あの時の、ヒソカに拉致されたような状態だった私の反応を思い出したようで、クロロがああ……という声を漏らした。
「いや、まあそれはそうだが。今はイルミの所にいるんじゃなかったか？」
「彼の一族に追われる羽目になったの。嫁にすることは許さないが一族のことを知った以上野放しにもしたくないようよ」
「それだけのことであの一家が追うとは思えないが」
答えはせず、視線を景色に戻す。いつの間にか一行は地面を走っていて、辺りは人の気配がまるでない廃墟だらけだ。
クロロが徐々に足運びを緩め、廃墟の内の一つの前で完全に足を止める。見下ろして言い放たれた言葉に、私は目を見開くこととなった。
「ようこそ、俺たち蜘蛛のアジトの一つへ。俺はお前を歓迎する」
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作者名：クロ | 作成日時：2019年6月1日 15時
