煙:犬顔 ページ1
「りょー」
聞き慣れた、俺を呼ぶ声。
「…なぁに、ゆーま。」
「……なんもない。」
カチッ、と煙草に火をつける彼。
「ちょぉ、俺ん家禁煙なんやけど。吸うんならキッチン行ってぇや。」
吐き出される白い煙。隣の彼の匂いと煙の匂いが混ざる。
「まーま、ええやん。俺のこの匂い好きやろ?りょーくん。」
コロコロと笑う彼。嗚呼、本当、俺はこの顔に滅法弱い。それを知ってる上でやる彼は本当にタチが悪い。
「……1本だけね。」
「へーい。」
満足気に煙を肺に入れる彼。吐き出される煙はちょっと少ない。
「…その吸い方、イヤ。」
ポツリと呟くと、1拍置いて隣から笑い声が聞こえてくる。言わなきゃよかった。
「りょー、こっち向いて。」
散々笑い声をあげ、深呼吸をしてやっと落ち着いた彼にそう言われる。ちょっと嫌だったけど、素直に振り向く。
勢いよく顔にかけられる煙。思わず目を瞑る。煙の匂いと、仄かに彼の匂いに襲われる。
目を開ければ、平静を装っているが、耳まで赤く染めて真っ直ぐに俺の目を見つめる、俺の大好きな顔。
…嗚呼、ホント
「……好き。」
「んははっ、知ってる。」
敵わない。
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作者名:おれお | 作成日時:2022年3月20日 12時