第七十六話 ページ10
A「…。」
クロハ「なんだ、さっきまでのニコニコ顔はどうした。」
＿＿＿言えるわけがない。
先ほどの発言が、私にとってはすごく嬉しかった。
たが＿＿＿
クロハが私を壁に押し付けたところから、思考がガラリと音を立てて崩れた。
クロハ「ほら。紅茶が不味くなるぞ。」
A「…はあー…。」
クロハ「なんだよ…溜息ついて。」
本当に、わけがわからない。
なぜクロハはあんな事をしたんだろうか。
普段は、こんな事なんてしなかった。
過激なラインにも入ってないし、やるとするならば、からかう事だけだ。
＿＿＿もしや、
A「…クロハ。」
クロハ「なんだよ、さっきから。」
A「今日のクロハって偽物？」
その瞬間、ピシッと空気が固まった気がした。
クロハの手が伸びたかと思うと、額に鋭い痛みが走った。
A「いっ……何すんの！」
クロハ「それはこっちのセリフだ！俺が偽物なわけあるか。」
A「だからってデコピンしなくても…。」
でも、今日のクロハはおかしい。
些細な事で顔が赤くなるし、何かと私はクロハに引っ張り回されるし。
A「うーん…。」
クロハ「何やってんだよ…。」
A「なんか、今日のクロハおかしいなーって…。」
クロハ「お前は俺を何だと思ってたんだよ。」
A「え？ただの黒蛇？」
その後、本日二度目のデコピンを食らった。
A「ごめんって！冗談だよ…。」
クロハ「俺を舐めすぎだ、お前は。」
A「ごめんなさいってば…。」
クロハ「はあ、全く…。」
ようやくその場が静まった。
カフェに入ってから、相当時間が経った気がしたが、思えばほとんど沈黙だっからかもしれない。
A「どうする？そろそろ帰る？」
少し名残惜しい気もするけど、帰ってもいい気がした。
クロハ「まあ、そうだな。もうお前は帰っていいぞ。」
A「何それ…用済みって事？」
クロハ「いや、そうじゃなくて…。」
クロハは何か言おうとしているのか、戸惑っている。
先ほどから思っているが、やっぱり、今日のクロハはおかしい。
クロハ「今日は…ありがとな。」
その言葉を聞いた瞬間、少し胸が熱くなった。
A「う…うん。じゃあね。」
私は後ろを振り返らずにカフェを出た。
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作者名：Madicc | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/redwhite/
作成日時：2014年1月20日 2時
