黒19 ページ21
＝綱吉視点＝
ツ「A？」
コテリと肩に重みがかかって名前を呼ぶ。
お互い話題も尽きてきて、ちょっとした静寂のうちに寝落ちたようだった。
リ「なんだ、もう寝たのか」
案外早かったなと言いながらリボーンが部屋に入ってくる。
ツ「おかえり、リボーン。さてこいつをどうするかな。出来ないこともないだろうけど、流石に階段下りるのは危ないしな」
リ「ベッド貸してやればいいじゃねーか」
ツ「それしかないよなぁ。俺は客間で寝るか」
Aを持ち上げてベッドに転がす。
布団をかけてやって、テーブルの上のコップを重ねて持っていきやすいように揃えていると、背後から小さな呻き声が聞こえてきた。
リ「魘されてるな」
ツ「酷い顔。……夢でくらい、幸せだけ感じてればいいのに」
幻術で幸せな夢を見せてやるのは簡単だ。
でも、それはこいつの望むところじゃない。
片付けていた手を止めてベッドに座る。
スプリングが鳴ったがAが瞼を持ち上げることはなかった。
ツ「……傷は、癒えないな」
冷や汗で額に張り付いた髪を分けて、自身の額をコツリと合わせる。
幼い頃から怖い夢を見るとこうしておまじないをしてやっていたことを思い出した。
まぁその対象は大体恭弥で、俺とAが両側からやってたわけだが。
ツ「獏よ、獏よ、獏よ。悪夢を食べて。怖い夢は、綺麗さっぱり食べ切って」
Aの体を夜から覆うように片手を顔の横につき、反対の手で強張った手を握ってやる。
そうして呪文を唱えれば、Aはふっと弛緩して安らかな寝息を立てた。
何の力もない、ただの言葉。
先生が教えてくれたただの言葉は、どんな幻術よりも強い力を持っていた。
リ「今のは？」
ツ「昔、人に教えてもらった悪夢を食べてもらう呪文だよ。俺達のおまじないの言葉」
リ「そうか。にしても意外だな、ツナ。お前が女に対してそこまで距離を詰められるとは」
ツ「Aを女として認識してないからじゃない？」
京子ちゃん相手とか絶対無理ですし。
そう言えば、リボーンはニヒルな笑みを浮かべて「ひでーな」と心にもない呟きをくれた。
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作者名：マシロ | 作成日時：2020年3月26日 16時
