専売特許-23 ページ48
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「Aさん今日も素敵ですね。好きです」
『おはようございます。今日も懲りませんね』
最早恒例となったこの挨拶。
と言っても3回目だが、どうやら本当の本当に毎日一回言うらしい。
もう一周まわって悩むのも馬鹿らしくなって来たくらいだが、それでも安室さんに好きだと言われるたびに何とも言えない微妙な気分になるのは変わらない。
それがなんだか落ち着かないので文句を言うのだが、何を言ってもやめようとはしないのは私がどう言っても御構い無しという事だろう。
さっきまではそうでもなかったのに、なんだかまたモヤモヤがぶり返して来た気分だ。言われた反応を見て楽しむのなら他を当たってくれ。
「Aさんが振り向いてくれるまで何度だって言いますよ」
『何度言われても変わらないですよ』
たまにみせる顔はそうじゃないのに、最近は誰にでも向けられているいつもの笑顔はあまり好きじゃない。
相変わらず顔が良いのには変わりないが、なんだかとてつもなく言葉が薄っぺらく感じるのだ。
やっぱり、安室さんは全く嘘つきだ。
その笑顔と甘い言葉で何人落として来たかは知らないが、嘘がお得意ならば私だってそれで返してやろうじゃないか。
そんな気持ちでせっせと仕事に励めば、その日のバイトはあっという間に過ぎて行って上がりの時間がやってきた。
安室さんが送っていくとうるさかったが、決心した私は強いのだ。いつもならば折れて送られていくところだったが、まだ明るいだとかこのあと用事があるだとか適当に押し切る。
その時また何故か何かを言いたそうな顔をしていたが、私が珍しく頑なに拒否したので諦めたようだった。
『そういえば明後日は沖矢さんと出かける日だったな…』
この事はもちろん安室さんになど言っていない。言う義理もないし言った方が面倒くさそうだし。
1人で歩く帰路でそんなことを考えつつ、昨日と同じく公園を通った時。
『………』
妙な、視線を感じた気がした。
またここだ。しかし辺りを見回しても怪しい人がいるわけでもなく、昨日とは違いまだ子どもたちも公園で遊んでいる。
なんだか気味が悪い、誰かに連絡でもしようか。いや、でも…。
もしかしたら、本当に気のせいかもしれない。
そう思って結局そのまま走って家に帰った。
そして次の日、私はそれを後悔することになる。
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山梔子(プロフ) - 真紅さん» 真紅さん初めまして。コメありがとうございます!頑張ります〜(^○^)! (2018年6月20日 0時) (レス) id: 1444a1608d (このIDを非表示/違反報告)
真紅(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2018年6月19日 16時) (レス) id: f5ab8da157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:山梔子 | 作成日時:2018年5月24日 23時