【銀魂】おはよう、愛しき人よ

番外篇13 ページ46

『何してんだ？』

休日の昼間、リビングのテーブルで何やら作業をしている彼女の肩口から覗く


『プリザーブドフラワーを作ってるんです』

何だそれはと聞けば、ブーケのような花と教えてくれ、枯れない生花みたいなものだと理解する


『晋助さんからいただいた薔薇が枯れてしまう前に、これとドライフラワーも作ろうと思って』

『随分と器用だな』

『昔は趣味で良く作ってました』

この間完成したものだといって、自分の部屋から花籠を持ってきた

生花よりも脆いらしく、触ることは出来ないがとても美しい


『だが、枯れたら何度でも贈るぞ』

『ふふっ

でも、プロポーズはあれが最後でしょう？』

だから記念なのだと薔薇の花を何らかの液に浸す


『この薔薇が枯れなかったら、あの時の気持ちを忘れないような気がして…たくさん部屋に飾りますね』

『なら、俺の部屋にも飾ってくれ』

分かりましたと微笑み、作業を再開する


『…なァ、それはいつ終わるんだ』

今日は折角の休日。こうしてAの姿を眺めているのもいいが、触れ合っていたいのが本音

彼女はそれを見透かして、焦らしているのか後半刻だと言う


『…待てないな』

『では、私の気持ちを思い知ってください。毎日そんな気持ちですから』

『ほう…』

俺を待つAの気持ちがこれなら、明日から早く帰るしかあるめェ

だが、たまにはお前がやっているみたいに焦らすのも一興

飴と鞭を交互に入れた方が、甘い飴の有り難みが分かるってもんだ


『…分かった。明日は早く帰る

だからお前も早くしろ』

駆け引きをしようとしても、結局は俺が先に折れる

Aはそれを笑って、手早く片付けて手を洗った

本当はもう終わりそうだったのではないだろうか


『お待たせしました』

悪戯に微笑んで、俺の横に座る

甘えるように擦り寄り、上目がちに俺を見た


『どうです？寂しかったですか？』

『そうだな。余り良い気持ちではない』

でしょう、と言いたげに口角を上げる


『明日、早く帰るなら映画のナイトショーを見に行きませんか？』

今たくさん良いのがやってますよ、と雑誌を見せる

共に選び、待ち合わせ場所と時間を決めた


『嬉しいです。ずっと見に行きたかったので』

昼間に見に行けばいいだろう、何て言わない。Aは俺と見に行きたかったのだ

だからさっきのも策略なんじゃないかって、思わずAを見ちまう


…まァ、彼女の愛らしい企みになら何度乗ってもいい

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