ほんの一瞬の夢を見る (ページ37)

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因縁ページ37

壬氏side

帝「そういえばあの先帝(父)も1度だけ本気になった女性がいるらしい。まあ、身分の差か何かで下級妃にすら迎えることが出来なかったらしいが」
昔、皇帝がそんな話をしていた…－

そんな俺は色目も効かない、俺を毛虫を見るかのような目で見る
そんな薬屋に興味を持っていた

これが恋だと思っていた
…あの時までは…

猫猫「…本当に良いのですか？」
「どういう意味だ？」
猫猫「高いですよ、緑青館」

薬屋が李白とかいう武官と里帰りをしたと聞いて悔しくなり
俺も薬屋の身元保証人となり、花街へ向かっている
薬屋は2度目の里帰りだ

「金ならある。心配するな。…夕餉は一緒にとる約束だからな」
猫猫「はいはい。分かっていますよ」

正直、緑青館にも妓女にも興味は無い
ただ、薬屋との時間が欲しかった

「ここが緑青館か…」
緑青館につくと煙管を噛む老婆が出てきた

猫猫「ただいま、婆さん」
やり手婆「ほう。これはこれは、上客そうだね」
老婆は俺を上から下まで見る
猫猫「だからそういうのを本人の前で言うのは…」

やり手婆「Aを呼んできな」

猫猫「A！？婆さん、木簡で伝えた通り、壬氏さまは部屋と食事だけで…」

老婆が誰かを呼び、薬屋が慌てている

やり手婆「なあにこんな上客に誰もつけないわけにはいかないだろ」

猫猫「まあ、お金があるって言ってたし…Aなら…いや、むしろAが危ないんじゃ…」

隣で薬屋はぶつぶつ考え込んでいる

A「あら！猫猫！おかえりなさい」

そこに現れたのは美しい妓女だった
その美しさに目が惹かれた

猫猫「A、久しぶり」
A「この前帰ってきた時は、会えなかったから…。良かった、会えて」

どうも薬屋とも仲が良いらしい

やり手婆「A、お客様だよ、あの部屋にお通ししてもてなすように。夕餉は猫猫ととるようだから席を外していいよ」

A「かしこまりました。お客様、どうぞこちらへ」

Aと呼ばれた妓女は先程薬屋に向けた笑顔とは異なる人形のような笑みで俺にほほ笑みかける

猫猫「出せないかと思いますが、Aに手を出さないでくださいよ」

彼女に着いていこうとすると薬屋にそう言われる

やり手婆「なんてこと言ってんだい」

その瞬間、薬屋は老婆に飛ばされていた

やり手婆「さあさ、お客様、こちらへ」

俺は薬屋を助ける暇もなく、老婆に促され、妓女に着いて行った