ほんの一瞬の夢を見る (ページ30)

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猫猫side

壬氏「先に釘をさしておく。Aと私の時間を邪魔しないように」

Aが部屋から出ていったあとの壬氏さまの第一声はこれだった

Aと壬氏さまの関係は何なんだろうか
少なくとも後宮にいたときは、Aと壬氏さまが一緒にいるところを見かけたことがない

それでも聞くと面倒ごとに巻き込まれるような気がして、深くは聞かまいと心に決めた

壬氏「なんだ、私とAの関係、気にならないのか」

壬氏さまは綺麗な笑みを浮かべてこちらを見る
嫌な予感がする

「Aから聞くことにします」

なんとか逃げようとする、が

壬氏「Aは私の妻だ」

「はっ！？」

思わず声を出してしまい自らの口を手で塞ぐ
聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない

壬氏さまがどれほどの位の方なのか分からないが、先程のAの衣装を思い出せば、低くない位であると言えるだろう

宦官だって初めから宦官だった訳では無い
子どもだっていてもおかしくないのだから
婚姻を結んでいてもおかしく無いのだ

それでも後宮のときは誰ひとり、壬氏さまが既婚であるだなんて話していなかった

「いつからですか」

聞かまいと心に決めていたはずが、思わず聞いてしまった
私が花街にいた間に何かあったのだろうか…

壬氏「もう3年になる」

それは…私が後宮に入ったころには、Aが壬氏さまの妻であったということを示す

「…そういうことか」

Aをたまにしか見かけなかったことも
Aが高級な点心を持ってきていたことも
全てに納得がいった

壬氏「私が面白い下女を見つけたと言ったばかりに、その日からAはお前に夢中でな」

壬氏さまは遠くを見つめている

何だか悪いことをした気分になったが
そもそも壬氏さまが悪いのではないだろうか

高順「今回も小猫を花街に戻したと言ったらAさまが壬氏さまと口をきかないようになり、大変だったんです」

高順さまが遠い目をしている
…1番の被害者は高順さまかもしれない…

壬氏「とりあえずそういうことだから、これからも私とAの時間は奪わず、Aと仲良くしてやってくれ。あと、Aが私の妻だということは、一部しか知らないから無闇に話さないように」

「……承知しました」

壬氏「あと、Aに変な虫がつきそうだったら払うか報告するかするように」

「……承知しました」

なんだか重そうだなあ