ほんの一瞬の夢を見る (ページ18)

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壬氏side

俺が特定の妃に…それも下級妃に肩入れしてはいけないことくらい分かってはいた

それでも自分を止めることが出来なかった
A妃の食事に毒が盛られたのは間違いなく俺のせいだ

いつもとは違う素の美しい顔立ちの、でも苦しそうに息をする彼女を見て、なんとも言えない気持ちになった

帝「下級妃の食事に毒が盛られたらしいな」

その夜、俺は帝に呼ばれた
A妃の今日の件について報告をしていたが、

帝「聞けばお前が肩入れしていたらしいが」

別のところからも報告を受けているらしい

「今回の件につきましては私の失態です」

思わず唇を噛む

帝「珍しいな、お前がそんな表情をするのは。お前がそんなに肩入れをするからどんな妃かと思えば、顔は平凡とのことではないか。まあ…身体は私好みらしいが」

どこからか仕入れたのか、帝はそう笑う
帝にとっては下級妃の1人や2人、どうということはない
…本当の彼女の顔立ちが知られていないことには安心した

帝「そんなに気に入ったのであれば、回復次第、お前の妃として迎え入れたらどうだ？」

その選択肢が頭になかった訳ではない
俺の妃として迎え入れれば、誰の目もなんの噂も気にすることなく会える

ただ…

A『元々、権力を分散させるために私は後宮入りさせられたのです。私自身も実家も権力や地位には全く興味はありません。女なので家業は継げませんが、私は早く後宮を出て、お父様のお手伝いがしたいんです。壬氏さま、私をここから出していただけませんか？』

彼女に化粧をする理由を聞いた際にそう言っていた
彼女は後宮にいることを望まない…

帝との謁見のあと、俺は高順を伴いA妃の元へ向かった
夜もおそかったため、いつも無表情の侍女たちも怪訝な顔をする

A妃の侍女は、全員、A妃やA妃の両親に、自身や家族の命を助けてもらった恩があるようで、今まで見たどの妃の侍女よりも忠誠心が高い

それでも立場上、俺を止めることは出来ないと分かっており、あっさりと部屋へ通してくれた

A「また、いらしたのですか、壬氏さま」

話すことが出来るまでに回復したA妃はいつもの声のトーンで俺を迎えた

「もう身体は良いのですか」

A「ええ、優秀な侍女たちと猫猫のおかげです」

まだ身体がつらいからだろうか、それとも化粧をしていないからだろうか、A妃はいつもと同じ表情でも色っぽく見えた