太陽と純恋 Ⅰ (ページ31)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:11,566 hit

ep.30 ページ31

.

「あっ！俺たちそろそろ行かなきゃ。リーが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」

「それって俺たちが最初の週に見つけちまったやつだと思うけどね」

「きっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」

そう言ってフレッドとジョージが駆け出して行ったが、途端に急ブレーキをかけ、Uターンして戻ってきた。

三人が何事だと目を丸めていると、フレッドがAの持っていた糖蜜パイを奪い取って自分の口に放り込んだ。

「えっ、フレッド！それ私の糖蜜パイ！」

「糖蜜パイなんていいからAも一緒に来てよ」

そう言って二人は今朝同様Aを強引に引っ張って連れて行ってしまった。

「まったく、兄貴たちはAがいないと何も出来ないのか？」

それを見ていたロンはフレッドとジョージのAに対する執着度合いに呆れていた。

「ねぇ、なんで私も連れてくの？」

廊下を歩きながらAが聞いた。

「理由はないな。ただ一緒に来て欲しかっただけ」

「えぇ、なにそれ」

ジョージの思ってもみない返答にAはクスクス笑った。

「あ、そういえばA」

「なに？」

フレッドが何かを思い出したようにAを呼んだ。

「なんでビーターの誘い断ったんだ？」

「んー、立派なビーターはここにいるし、私にビーターは向いてないって思ったから」

「まぁ、立派なビーターなのは否定しないな。でもやってみないとわかんなくないか？」

「それロンにも言われた」

兄弟で同じ事を言うからAはまたクスッと笑った。

「やってみたら案外向いてるかもしれないぜ？」

「ううん、私は観戦側でいいの、それに ────」

そこまで言ってAは言葉を濁した。

「それになに？」

ジョージがAの続きの言葉を施すように聞いてきた。

「それに選手になったら二人の活躍ちゃんと見れないじゃん」

そう言ってAは頬を少し赤くした。

「なにA、そんなに俺たちの試合姿見たかったの？」

「へぇ〜そっかそっか〜、そうだったのか〜」

Aの言葉を聞いた双子はあからさまに顔をニヤケさせてAにジリジリ詰め寄った。

「やっぱり言わなきゃ良かった」

Aは二人にこの事を話すんじゃなかったと心底後悔した。

.