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食事 ページ11

「それなら、はやくいらっしゃい」

とことこと、できる限り早足でエレベーターへ向かう。

「待って待って、Aちゃん、どこ行くの」

まあ、それでも梶井さんは簡単に追いついてくるのだけれど、戸惑った様子が面白い。答える前にAはふと、壁に凭れるようにして立っている少年がいるのに気づいて立ち止まった。


「こんばんは中也さん」

「ああ!? 手前なんだ? 嗚呼、誰かと思えば、Aか」

中也さんはわかりやすく動揺して見せた。

「変ですかね」

予想以上の驚きように、Aは笑いをこらえた。

「別に変じゃねぇけどよ」

「ふふ、ありがとうございます。そうだ、中也さんも行かれます? 橘堂。いいでしょう、梶井さん?」

ちなみに組織に入って急に梶井さんと呼び始めたのではなく、Aは使用人も呼び捨てにすることはなかった。(だからAにとって家庭教師時代のモトジロウは特異な存在である)

Aは、気を許していたそのモトジロウ相手に、これでも(ぶん)(わきま)えている積りで、夕食のお金を払うことになるであろう彼を振り返って見た。

所詮、子供は子供だ。勿論、モトジロウが今も使用人なら、返事をするのはAで、お金を払うのもAだが。

「もちろん、お嬢様の仰せのままに」

梶井さんは嬉しそうだった。Aが最近あまり我が儘を言わないからだろう、恭しくお嬢様なんて呼んでくる。

「……手前も、森医師(せんせい)になんか言われてんのか?」

「いえ、何も」

「そうか」

中也さんは何か考えこんでいるようだった。ここに太宰さんがいたなら、中也ったら足りない頭で何考えこんでるの? とからかうだろう。

三人で橘堂に向かった。

橘堂→←地下室



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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/  
作成日時:2017年6月29日 13時

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