30話 ページ31
noside
シウは世界が嫌いだ
しかし決して“世界”の全てが嫌いなのではない
“世界”という器が、枠組みが嫌いなのだ
そこに住まう誰か、その“中身”は、邪険に扱って捨て去ろうと思えるほど嫌いではない
それは、シウが“マスター”を演じ続けることのできた
“汎人類史”を、“世界”を見捨てることのなかった
最後にして、唯一の防波堤
それだけは、憎悪を抱こうとも。嫌悪に溢れようとも。崩れることはない
最後の最後、“マスター”として「捨てることを許されなかった」もの
抱き続けることを強制され続けた、絶対の防波堤
それと同時に、シウが捨てずに持ち続けることが“出来てしまった”、人の情
もうボロボロで傷だらけ
それでも壊れずにいることが“出来た”、シウの生まれ持った心の強さ
“世界”を心底嫌悪して、とっくに諦めているというのに
演じる役は完璧で、繋ぎ止めることが出来てしまうだけの強さがある
それが、そんなシウという一人が
気持ち悪くて、気味が悪い
オベロン「……………いい」
ポツリと、息を吐くように溢した
オベロンの右手から力が抜けたのを確認して、シウはそっと掴む手を下ろし、ゆっくりと放す
今この場で眠らせようとするつもりがないことを＿＿渋々、苦渋の決断で諦めたことを認識したためである
オベロンはシウの肩に頭を乗せ、徐ろに腕の中に入れた
それを見て、シウは負の感情を一切見せず、隙のない笑顔をしていた表情に、申し訳無さを微かに浮かべる
お互いが唯一の理解者
己にとってオベロンがどういう存在か
オベロンにとって己がどういう存在か
それが分からぬようでもないのだ
眉を少し下げて、シウは左手でオベロンの頭を静かに撫でる
オベロン「もういい…」
『……うん』
オベロン「……もう、いいから……」
何を言ったって、何をしたって
妖精眼を持っているわけでもないこの人間には、どうせ全部バレている
前の世界で散々それを分からせられてきたのだ
可能な限り素直になった方がいい
シウは誰に対してもその体勢を崩さない人間なのだ
グリグリと、肩に頭を押し付ける
オベロン「…お前の好きにすればいい」
『うん』
オベロン「好きに、すればいいから…」
『ん、ありがと』
オベロン「…次碌でもない死に方しそうになったら、来いよ」
『行けたらね。……でも、うん。オベロンがいるとこなら安心かなぁ』
オベロン「……うん」
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ルウ(プロフ) - 新作おめでとうございます！「魔界の異邦人」や「前世は柱、今世はヒーロー？」も応援しています！体調に気を付けながら更新頑張って頂けたら嬉しいです。 なんといっても、零月 さんの作品は神作だらけですからね！私の生き甲斐です！ (9月21日 22時) (
レス) id: e1051b8db4 (このIDを非表示/違反報告)
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