29話 ページ30
noside
宝石をはめ込んだように、その瞳に濁りはない
一点の曇りもなく、済んだ蒼は美しく輝いている
こんな、奈落のような森の中にいるというのに
“あんなもの”を見てきて、散々消費されてきて何故そんな真っ直ぐな目が出来るのか
その理由を知っているからこそ、尚更気持ちが悪い
『これを夢にしない』
オベロン「夢みたいなもんだろ？この世界はきみが取り戻さないといけない汎人類史ですらない
こんな世界でまで馬鹿みたいに身を削る必要、あるのか？」
『あるよ』
一寸の躊躇いもなく、揺るぎなく、答えた
顔を顰め、掴まれている右手に力を入れるオベロン
対象的にシウの表情はにこやかで
まるで仮面を被るかのように、隙のない笑顔
その表情が、瞳が、声が、オベロンは何より嫌いだ
『この世界で生を受けたんだから』
オベロン「それが理由になるって本気で思ってんのか」
『思ってないよ。そんなわけ無いじゃんか。生まれた場所だからって大事に思う義務はない
でもオベロン、私はね、“生贄”なんだよ』
目からハイライトが消える
吐き気がする。気持ちが悪い。気味が悪い
そんなもの、シウが一番感じてきた
『生贄に拒否権無いでしょう。それに私、役を放り投げるのはそれこそ嫌だ』
オベロン「……それでいいのかよ」
『いいも何も、役を降りることはそもそも許されないじゃんか
……それにね、オベロン。私は“壊れることを許されなかった”。“壊れきることが出来なかった”んだ
だからねぇ……だから、さ』
ずっと、ずっと、吐き気がした
何故自分にこのような役が与えられたのか
いつまで役を羽織って、演じ続けていればいいのか
消費され続けていればいいのか
救われる、だなんて。とっくに諦めた
壊れていいように使われるのは気に入らない
そもそも壊れて正気を失うなんて許されなかった
暗い感情は全て表に出すことなく、奥の奥の奥にしまい込んで、強く強く押し込んで
そうやって完璧な“マスター”を演じ続けて
『“世界”は嫌いだ。ズタズタに引き裂いて、グチャグチャに掻き回して、果ての果てに捨て去ってしまいたいぐらい吐き気がする。“世界”のために動くだなんて虫酸が走る
…けどさ』
“世界”が、“人理”が嫌いだ
とっくに嫌いで嫌いで吐き気がする
『でも、そこに生きる“誰か”や“営み”を素敵だと思えるだけの「情」は、残ってるんだ』
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ルウ(プロフ) - 新作おめでとうございます！「魔界の異邦人」や「前世は柱、今世はヒーロー？」も応援しています！体調に気を付けながら更新頑張って頂けたら嬉しいです。 なんといっても、零月 さんの作品は神作だらけですからね！私の生き甲斐です！ (9月21日 22時) (
レス) id: e1051b8db4 (このIDを非表示/違反報告)
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