28話 ページ29
noside
雲一つない星空の下
人気のない森の中で、一つ影が見える
覆い茂る木々の葉に遮られ、月の光さえ届かない真っ暗な森の中
隙間から転々と見える星々を、鮮やかな蒼が静かに見上げていた
深淵に身を潜めるがごとく、遠くを眺めるように
宙を眺める瞳は、依然鮮やかに映えている
オベロン「…こんなところで何してんの」
『落ち着くんだよねぇ…』
心地よさそうに頬を緩める
その隣に実体化してオベロンは腰を下ろした
羽が背に当たって、シウは顔には出さずに嬉しく思う
温度のない無機質な透明な羽が、真綿のように柔らかく暖かい
オベロン「この何もない森が？」
『うん』
上を見上げたまま、視線を向けることもなく、ずっと星を眺めている
流れ星が見られるわけでもなく、一番星があるわけでもない、なんてことない星空
それも、ちらほらと垣間見える程度の微かな光
オベロン「…随分と熱心に見てんな。ここに来てまで見るほどのものでもないと思うけど？」
『＿＿＿何もないからね』
ふ、と息を吐く
身をゆだねるように、シウは夜の森の中でゆったりとしていた
足を伸ばして座り、両手を背後に回して体を支えている
『何もないから、静かで、＿＿＿＿真っ暗だからいいんじゃないか』
オベロン「……お前」
『…此処、ちょっとしたお気に入りなんだ。人も、動物も、何にもなくて。私が”何か”をする必要もないから、息抜きによくてさ』
時折瞬きを挟む程度で星を見続ける
夜の森の中に安息を見出しているシウに、オベロンは眉を寄せた
こんな暗闇の中でもわかるほど異様に鮮やかな澄んだ蒼を今は見ていたくなくて＿＿＿(本当はずっと見ていたくなんかなくて)
人の形を保っている片手を、シウの目元へもっていく
手のひらが蒼を覆いつくす前に、そっとその手は防がれた
オベロンの手を、シウの右手が優しく掴んでいた
しかし、これ以上手を進めさせはしまいとばかりに、掴む手は優しくも力がこもっている
『だめ』
オベロン「＿＿＿”こんなところ”に息抜きに来るくせに？」
『そうだよ。でも目を閉じることはできないさ。これは”夢”じゃない、”現実”だからね』
オベロン「………じゃあ寝ちまえば？」
そこで初めて、シウは上から視線をそらした
タンザナイトのような鮮やかな瞳が、ゆるりと弧を描く
『寝ないよ』
諦念も、羨望も、吐き気も、その瞳には映さない
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ルウ(プロフ) - 新作おめでとうございます！「魔界の異邦人」や「前世は柱、今世はヒーロー？」も応援しています！体調に気を付けながら更新頑張って頂けたら嬉しいです。 なんといっても、零月 さんの作品は神作だらけですからね！私の生き甲斐です！ (9月21日 22時) (
レス) id: e1051b8db4 (このIDを非表示/違反報告)
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