Sewing needle and shears (ページ7)

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7話ページ7

目の前の影が片膝をついて黒いジャケットのポケットから針を取り出す。それを認識した僕はまた目を閉じた。針なんか使ってどうするんだ。怖くてもう何も見たくない。
　頭に被せられたものが僅かに引かれ、一瞬こめかみ辺りに針が当たる感触がして思わずピクリと動きそうになるのを堪える。動いたら終わりだ。何をしているのかは分からないが少なくとも今は殺される心配はないだろう。
　少し経って、ハサミが何か細いものを断つような音が聞こえる。薄く目を開けると人影はゆっくりと立ち上がり、後はもう用はないと言わんばかりに左へ向きを変えるとそのまま歩き去って行った。
　足音が完全に聞こえなくなってから僕は慎重に立ち上がって先ほど引っ張られた場所をまさぐったが最初と比べて特に変わった様子はなさそうだった。そんなことよりとにかく出口を探さなければ。
　それにしても僕は一体どうやってここに入ったのだろう。ここに来るまでの経緯を一切覚えていない。一つだけ確かなのは、ここに来たのは僕自身の意思ではないということだ。臆病者の僕がましてや夜に自分からこんなところに入るなんて普通ありえない。

　しばらく歩いていると廊下のあちこちに先ほど見たのと同じくらいの大きさのクマのぬいぐるみが転がっている。この場所を通るのは今が初めてだろう。もしそうでなければとっくにぬいぐるみの存在に気づいたはずなのだから。

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