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「 いった………! 」
すぐさま私から離れるように、
というかしゃがみこむように後頭部を抑える
マリの陰から登場したのは
「 お前も何普通に抱きつかれてんだよ。 」
と、少し不機嫌そうな風磨。
手には丸められたぶ厚めの教科書を持っていて
…ああ、これでマリを。
と思うとなぜか私まで後頭部が痛いような気がした。
「 ごめん。あ、先生からの呼び出し終わったの? 」
あのあと、もう一件通知が来ていて
『 悪い、先生から呼び出しくらった。
下駄箱で待ってて。 』
と、悲しそうな、怒ったような
変なスタンプとともに送られて来た。
「 ん、終わった。
春休み入る前に
クラスの文集まとめとけって。 」
こんなのでも、一応クラス委員長をしてる風磨は
先生からの人望も厚いらしく
しょっちゅう職員室に呼び出されている。
「 あー、もうそんな時期だもんね。
…ん? 」
相変わらず少し不機嫌そうに細めた目は
私の目をじっと見つめていて。
普段見つめられることもないのに、と
何か言いたげなそんな表情に
もう一度口を開こうとした時。
「 もう!何すんの風磨くん!嫌い! 」
「 はいはい、よしよし。 」
急に立ち上がったマリに視界を遮られ
涙目なまま聡のところへ抱きつきにいったのを皮切りに
少し静かだったその場が、また騒がしくなった。
「 風磨くんたち2人で帰る? 」
1つ下の学年、つまり高校1年の
佐藤勝利が騒ぐ2人を尻目に
こそっと私たちに聞いてくる。
普段仲がいい5人で帰ることが多いけど
風磨と2人で帰ることも多かった。
約束はしていないのだけれど
毎日のように風磨が教室に迎えに来て
この3人組もタイミングがあえば一緒に帰宅するし、
合わなければ2人で肩を並べて帰宅した。
「 何を急に気使ってんの、勝利さん。 」
「 いや、だって、ほら。 」
私と風磨を交互に見た勝利は
口角の右側をキュッとあげると
そのままにやりと風磨を見上げた。
その視線につられて
私も風磨の顔を見上げると、
私から目を逸らして何とも気まずそうな顔。
なんだろう、と不思議に思っていると
「 みんなで帰ろ。 」
ぼそっと風磨が呟いて
あー、勝利、ちょっとさぁ。
と勝利の腕を引きながら
靴を履き替えに行ってしまった。
...変なの。
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りん - 雰囲気がとても好きで、いいお話だなと思いました。ここまで頑張って書いてくださりありがとうございます。 (2020年3月5日 0時) (レス) id: 8fc4483935 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りゅん | 作成日時:2018年1月23日 22時