“僕じゃない”-TH- ページ26
『ほら、やっぱり来てくれた』
って、Aの手には
スプレー缶と、
２本のバナナウユ。
TH「あの頃は若かったけどさ。
もう俺ら大人じゃん。
完全に器物損壊で逮捕だよ」
『うわぁ、テテくんが
難しい言葉使ってるよぉ〜』
TH「なんで幼稚園の時の俺のあだ名知ってんの」
『ジミナが言ってた』
TH「…、」
『いいじゃん、捕まっても』
TH「良いわけないじゃん」
『2人なら怖くないよ。
いつだってそうだったでしょ』
Aは俺の手を掴んで、
前に進んでく。
あの頃、友達がいないとか
居場所がないとか
不安そうだったAの手を、
掴んだのは俺だった。
今は、
そんなAが俺の手を掴んで、
前にグングン歩いてく。
いつから、そんな奴になったんだよ、って。
高校の時は甘ったるい安い香水つけてたのに、
今のAからは高級な大人の女っていう
香りが、長い髪の毛から香る。
その髪に触れたら、
もう2度と離したくないって、
思っちゃうんだろうな。
『よくここで書いてたよね、』
キャップを開けて、
灰色の壁にスプレーを吹きかけると、
シンナーの香りが漂う。
『テヒョンが、
私を、連れ出してくれたよね』
って、目を細めて、
大事そうに俺を見つめるから、
俺はたまらなくなる。
TH「……そんな昔のこと、忘れたよ」
『なんて書こうか、』
昔書いてた字を思い出した
TH「forever young 」
『………んー！いいね！』
一気にあの頃に戻ったように、
俺たちは壁にスプレーを吹きかけた。
不思議だ。
俺は久しぶりに、
本気で笑ってた。
.
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作者名：やきにくさん
| 作成日時：2021年2月11日 15時
