【刀剣乱舞】私はあんな姉のコピーじゃないので新しい本丸で暮らします。

足枷 ページ32

『最後にここを縫って……っと、完成だー！』



全ての“あれ”を作り終え、紙袋に完成品を入れる。



我ながら良い出来だ。元々裁縫には自信があったので、家庭科の作品発表会などでは他の子が作ったものよりも、私の物だけクオリティーが高かった。



チラリと時計に目をやれば、丁度午後七時だった。



現代では3D技術が発達している為、ベースとなる物は数分で作成出来た。とは言え、たった三時間で大量の“あれ”の刺繍を完成させたスピードは、家庭科教師も顔負けだと思う。



廊下に顔を覗かせれば、騒がしかった各部屋から声が聞こえない。



アイツらが私を除いて海に行き、私だけが本丸に残って書類仕事をしていたあの時のように、物音一つ聞こえない。



私が“あれ”を作るのに夢中になりすぎていて、彼らが部屋を出ていったことに気がつかなかったのだろう。人は物事に集中しすぎると、何かに気がつかないときがある。



“あれ”の入った紙袋片手に、大広間へ向かう。



大広間へ向かうだけなのに、こんなにも時間が遅く感じることが今まであっただろうか。



足が大広間へ向かうのを拒んでいる様な、足に重い鎖が巻き付けられてる様な、そう思ってしまう程に歩く歩幅が小さかった。



やっとのことで辿り着いた大広間の前。



もし、「やっぱりお前なんか信用できない」なんて言われたら？



恐怖と不安で歯がカチカチと鳴るが、歯を食いしばり襖に手を掛けたのだった。

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