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隆二side
梧平の息子さんと奥さん、そしてAが１つのテーブルについて
残りの俺たちは、その隣のテーブルについた。
俺達は無言のまま、隣から聞こえてくる会話に耳をすます。
「…もう…父には会えないと思っていたので…とても驚きました。」
テーブルの上に置かれた箱にそっと手を添える男性。
Aはそれを見つめた後…
そっと、一枚の紙を差し出した。
不思議な顔をして、その紙を見つめた後、ギョッとした顔になって絶句した男性に
「梧平さんが持っていた金塊を現金にした小切手です。お二人への遺産になります。」
なんの表情も浮かべずに、そう言ったA。
男性は…
しばらくその紙をじっと見つめた後…
…
…
「…受け取れません。これは…父が大事な人から盗んだものでしょう？」
悲しそうに、そう言った。
Aは、相変わらず表情のないまま、今度はカバンから、透明の袋に入ったものを大切に取り出す。
…梧平の日記…
俺と臣の目が合った。
死に際の…
後悔が綴られたあの日記…
男性の視線は、その一点に集中した。
「お父様の亡骸と共にありました。風化して…ほとんどの字が判別できる状態ではありませんでしたが…
…繰り返し書かれていた文字は分かりました。
『すまなかった。』
『加奈子に会いたい。』
『優平に会いたい。』
そう…書かれていました。」
男性の表情がくしゃっと崩れて…
両手で顔を覆って肩を震わせた。
Aは…
テーブルの箱を持つと、車椅子の女性の膝の上に乗せて…
「梧平さんが……お戻りになられましたよ。」
女性の両手を、箱を包むようにそっと動かした。
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作者名：◎まる◎
| 作成日時：2018年10月23日 20時
