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隆二side
カラカラ…
扉を開く音で、男性が振り返った。
品の良い…痩せ型の…優しそうな男性。
「…あ…琴平さん…ですね？」
Aを見て、その後、確認するように蓮温を見た男性に蓮温は優しい表情で頷いた。
Aはすっと一歩男性に近づくと…
「この度は……突然の連絡に加えて…一方的なお願いをしてしまい、誠に申し訳ありません。」
深々と頭を下げた。
驚いたのは、俺と臣だった。
臣の記者会見の時に、形式的に頭を下げた彼女は見たけれど…
どちらかと言うと、頭を下げられる彼女ばかり見てきて…
そんな姿を見るのは初めてだったから。
男性は慌てたように、
「頭を上げて下さい。むしろ、お詫びしなければならないのはこちらの方です。」
彼女に声をかけ…
「それが……父ですね？」
優雨の持っている箱に視線を移した。
「…はい。」
頭を上げたAは…
ずっとブツブツと小声で話し続けていている車椅子の女性に視線を移して…
彼女の前にしゃがむと…
「琴平と申します。初めまして。」微笑んで自己紹介をした。
女性の独り言は一瞬だけ止まったけれど…
その焦点はAを捉えることはなく…
再びブツブツと始まる独り言。
「…もう…いつどうなってもおかしくない年齢です。認知症で、ただ、生きているだけ…そんな感じなんですよ…。」
時の流れを受け入れているように微笑んだ男性は
「…座りませんか？」
中庭にあるガーデニング用のテーブルとチェアに目を向けた。
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作者名：◎まる◎
| 作成日時：2018年10月23日 20時
