ふたり

16 You ページ16

ここに来るまで案内してくれた人も、
通ってきたオフィスの中で働く人たちも、

全員かっちりしたスーツを着ていた。



社員さんたちの視線が痛かったよ！





大「あはは。営業とか、お客さんと会うことが多い部署の方通ってきたからだよ。
Aは大体俺の部屋で過ごしてもらうからそれで大丈夫。」





それに…と続けて、
大我さんはけろっと言い放った。





大「Aスーツ似合わないじゃん！」




『はぁぁぁぁぁ？！』

大「あははっ！
社会人一年目のときさぁ、
街で偶然仕事終わりのAに会ったんだけど、
そのときのかしこまったスーツがまぁ似合わないの！

馬子にも衣装にもならないってつい言っちゃってさ、
そのときも同じ反応してたよ！」





北斗さんへ。

大我さんが失礼なのは昔からですか？
人を殴ってやりたいと思ったのは初めてです。






まだお腹抱えて笑ってる大我さんに
思わず握りしめた拳をなんとか自制して。





『大我さん笑いすぎでしょ！
いい加減ひっぱたきますよ！？』

大「わー！それも言われたよ！
あのときはひっぱたかれてから言われたけど！」




今の方が少しだけ容赦があるね

なんて大我さんはめちゃくちゃ楽しそう。



大我さんが明るすぎるからか、

北斗さんと二人だったときには言わなかったような言葉がポイポイ出てきて。



あれ？私こんなキャラだっけ？


いや、そもそも今の私が本当の私じゃないんだから、
記憶をなくす前はこんな感じだったってこと？



北斗さん、妻にする人こんなんでよかったの？





大「後日北斗からクレームのメールきてさ。
Aがスーツ着なくなったんだけど！って！
お前超単純なの！」





そのときからもう一緒に住んでたんだ。

大我さんの言葉の端々から北斗さんとの生活を連想して、


本当はもっと聞きたいんだけど…



今日は仕事しに来てるからね。





『もう！それより今日から何をしたらいいか教えてください！』

大「あぁ、そうだったそうだった。
楽しくてついね。A、全然変わんないんだもん。」





じゃあ説明するね。



この人社長で大丈夫か。
そんな不安は、仕事スイッチの入った大我さんの横顔を見たら消えてなくなった。


やっぱり大我さんはすごい人みたい。

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