◇ ページ32
ハイヤーだから、普通のタクシーと違ってプライバシーが保たれてるって前提での話なんだろうけど、それにしたって。
JK「あんた、自覚あったんだ？テヒョンイヒョンが」
って、これ以上はどうしても、口から出てこなかった。
理解してても、認めたくないから。
こんな女に、ヒョンがどうしてって、そればっかり思ってるから。
『テヒョンさんが、私を好きってことですか？』
ばっと、音が鳴る勢いで、隣のAの顔を見ちゃった。
なんでそんな無感動に言えるの？
どんな顔でそれ、言ったの？
そしたらAは、ちょっと困ったような、嬉しいような、でも悔しくて仕方ないって顔で唇噛んだ後
『日本にいた時最後らへんから、そんな感じだったからわかってます。だからテヒョンさんは、まだそうなのかーって、びっくりしてます』
って。
「まだ、て」
『え？』
「まだそうなのか、て。あんたはそうじゃ無いんだ？」
まだ、てことは、今があるってことだ。
テヒョンイヒョンはまだ。
じゃあ、こいつは？
今は？
『…私は、違います。そりゃ、あの時はちょっと好きでしたけど。…そもそもかなり複雑だったから』
『今、私はテヒョンさんに恋はしてない。かっこいいし、素敵だし、思われるのは困るし恥ずかしい…でも、正直嬉しい気持ちも、ありはしますけど』
あるんじゃん、て思ったけど俺が見つめる先の、Aの表情が。
『私は、そんなつもりでここに来てない』
浮ついたとこ一切なくて、真剣に、仕事してる時の人の顔だった。
あ、こいつ。
すごく真面目なやつじゃん。
こんなに仕事できるくせに、
かなり、不器用な方の。
そう思ったら、Aに対しての妙な嫌悪感はすっと消えてった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 864人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フネ55
| 作成日時：2023年1月30日 20時
