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強引な艦長室に連れていかれ、にこにこと笑みを浮かべる坂本に見下ろされる。
Aのやったことは、黒寄りのグレー。
坂本達にやったらいけないと言われていないだけで、所謂スパイ行為だ。
「まさか、こんなことしでかすとはのう」
いつもと変わらない笑顔のはずなのに、恐ろしいとさえ感じる。
目をぎゅっと瞑り、頭を下げた。
もうどうにでもなれという気持ちだった。
「…Aは何度もわしを驚かせてくれるのう」
思ってもみない言葉に拍子抜けしてしまう。
思わず目も開いて、坂本を見ていた。
坂本は歯を見せて笑い、頭を撫でる。
「相手にばれんかったらいい。
もし、ばれても、それが人を喜ばせようとしてやったもんなら咎められん。
Aのうちの取引先を思う気持ち、わしらを納得させようと努力はしっかり伝わったぜよ」
坂本達が生業としている商売は、こんなにも胸を熱くするものなのかと感じさせられた。
早くも家を出て、坂本の下で働いてきた姉が羨ましいとさえも感じた。
今は場所は違えど、少しは商売人として身を置いている人間だ。
坂本達とまではいかないが、今回をきっかけに自信がついて、
「私もお姉ちゃんみたいに、ばりばりキャリーウーマン目指します」
「そこはわしじゃないんか」
Aは坂本と同じように歯を見せた。
そして、坂本はふわりと女を抱き抱える。
にこにことした笑みに違う感情が含まれているのに気づいて、
「…今の流れで、そうなりますか?」
腕の中で暴れるも、坂本はAの頬に口付けして、
「一応、陸奥から叱っとけって言われちょるからのう」
悪戯っ子のように笑って、そのまま布団に潜り込む。
眼鏡を外した綺麗な青い瞳がAを優しく見ている。
その視線が嬉しくて、
「仕方ないから、坂本さん式の叱責を受けてあげますよ」
生意気な口を叩いて、男の頬に口付けを返した。
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※ここまで読んで下さりありがとうございました。
短編含め、このシリーズはおしまいです。
ゆるゆると続いたお話でしたが、楽しくかけました〜!わ〜い!
またどこかでAさんとあえますように。
Nattu.
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作者名:Nattu | 作成日時:2021年12月24日 17時